「必要なのに顧みられない医薬品・医療機器の提供を通して、社会に貢献する」をミッションとして、患者数が少なく収益を見込むことができない医薬品の研究開発にも果敢に取り組むノーベルファーマ。2003年の創業以降、開発した製品は医療機器の「チタンブリッジ」を含め16品目に及ぶが、うち10品目がオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)というところにも、社会貢献を最優先する企業の姿勢がうかがえる。2019年12月に上市したばかりの鼓膜穿孔治療剤「リティンパ」の開発経緯を中心に、アカデミアの成果を速やかに実用化につなげる同社独自の開発戦略について島崎茂樹研究開発本部長に聞いた。

■「出口企業」として開発を支援

――12月9日に発売された鼓膜穿孔治療剤「リティンパ耳科用250μgセット」は、アカデミアの成果を引き継いで製品化したものということですが、具体的な開発経緯を教えていただけますでしょうか。

島崎 「リティンパ」は、褥瘡の治療などに使われているヒト塩基性線維芽細胞増殖因子bFGF(一般名:トラフェルミン)を主成分とする鼓膜穿孔治療剤です。

 bFGFを用いた鼓膜再生療法は、北野病院の金丸眞一先生が考案し臨床研究の経験を積まれていた新しい治療法で、これを実用化するために、神戸のTRI(医療イノベーション推進センター)支援の下、先端医療センター病院(現・神戸市立医療センター中央市民病院)、京大病院、慶大病院が医師主導治験を進めてきました。その成果を基に当社が出口企業として承認申請を行ったというのが経緯です。

 自然閉鎖が見込まれない鼓膜穿孔に対しては、これまで耳後部から結合組織や軟骨片を採取し、穿孔部位に移植する鼓膜形成手術などが行われてきましたが、侵襲性が高く、聴力が改善されない場合があるなどの課題があり、低侵襲で外来でも実施可能な治療法が望まれていました。

 「リティンパ」による治療は、当社が独自に開発したゼラチンスポンジにbFGFを浸潤させ、それを鼓膜穿孔部に留置し、組織接着剤(フィブリン糊)で接着・閉鎖することで鼓膜の再生環境を保つ治療法です。侵襲性が低いことから、外来で行うことも可能です。技術も含め保険適用が認められましたので(技術料:鼓膜穿孔閉鎖術1580点)、患者さんにとって非常にアクセスしやすいものになると期待しています。

――開発中苦労されたところは?

島崎 bFGFとゼラチンスポンジとフィブリン糊を組み合わせて治療するという手技になりますので、当社というよりも先生方の間で、治療の手順を取り決めるのにかなり手間暇をかけたということがあります。

――臨床試験の成績はどうだったのですか。

島崎 治験(国内第Ⅲ相試験)では、6カ月以上自然閉鎖が認められない鼓膜穿孔患者20例に対し最大4回の処置を実施しましたが、鼓膜閉鎖割合は75%。聴力は100%改善し、高い有効性が確認されました。

 「リティンパ」による治療はすでに50施設を超える医療機関で採用が決まっていると聞いています。