漢方医学教育の現場で指導者不足の状況が続いていることを受け、漢方教員育成の方策を巡るディスカッションが2月8日、都内で開かれた日本漢方医学教育振興財団主催のシンポジウム(漢方医学教育SYMPOSIUM 2020)で行われた。同財団は「漢方医学教育短期実地研修」支援事業などを通じて、大学医学部や臨床研修病院での指導者確保を支援していく考えだ。

 この日のシンポでは、東海大専門診療学系漢方医学教授の新井信氏が、2019年に実施した卒前漢方教育に関する全国82大学医学部調査の結果を発表。

 2016年の医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂で「漢方医学の特徴や、主な和漢薬(漢方薬)の適応、薬理作用を概説できる」という到達目標が明記されたことなどが影響し、2011年の前回調査と比べ、漢方医学の必修コマ数が7.25回から8.28回に上昇、専任教員(指導者)がいる大学も29%から37%に増えるなど漢方教育へのニーズが高まっているとした。

 ただ調査では、解決すべき課題について70%の大学が「漢方教育を担う指導者の養成」を挙げるなど、2011年調査時よりも指導者不足に悩む大学が増えている実態も明らかになった。

 新井氏は、全国の臨床研修病院を対象に2013年に実施した卒後漢方教育の実態調査(有効回答数816施設)でも、「教員がいない」などを理由に漢方医学教育を取り入れていない施設が多数(632施設)あったことを紹介し、「卒前・卒後いずれにおいても漢方医学教育を担う指導者の養成が最も重要な課題」と訴えた。

 シンポでは「次世代の漢方教員の育成」を巡るパネルディスカッションも行われ、「総合診療部の先生方に漢方の専門医を取ってもらいたい」(中川幹子大分大医学教育センター教授)、「総合診療と漢方診療の親和性は高い。総合診療において漢方医学の知識は大きな力になる」(大塚文男岡山大院総合内科学教授)など、総合診療医の中から漢方医学の専門医や指導者が育成されていくことを期待する意見が相次いだ。

■「短期実地研修」支援事業の活用を

 座長を務めた田妻進JA尾道総合病院長は、大学医学部や臨床研修病院で漢方医学の教員を目指す医師などをバックアップするため、漢方医学教育振興財団が新規に立ち上げた「漢方医学教育短期実地研修」支援事業を紹介。東京女子医大附属東洋医学研究所をはじめ7つの教育施設が研修受入施設に登録しているとし、積極的な活用を呼びかけた。

漢方医学教育短期実地研修の概要

【研修対象者】
〇大学医学部および臨床研修病院所属医師のうち
 ・漢方医学教育に携わる教員および医師
 ・各診療科「漢方外来」担当医師
 ・漢方医学教育を目指す医師

【受入登録施設】
〇東京女子医大附属東洋医学研究所
〇東北大病院総合地域医療教育支援部漢方内科
〇福島県立医大会津医療センター附属病院漢方内科・漢方外科
〇千葉大病院和漢診療科
〇富山大病院和漢診療科
〇近畿大東洋医学研究所
〇麻生飯塚病院東洋医学センター漢方診療科

【受け入れ期間】
①7日未満、②1週間〜1カ月未満、③1カ月〜3カ月 など

【申し込み方法】
日本漢方医学教育振興財団ホームページ「漢方医学教育短期実地研修支援事業」参照