中外製薬は7月29日、重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連肺炎患者を対象としたIL-6阻害薬「アクテムラ」(一般名:トシリズマブ)の国際共同第III相臨床試験(COVACTA試験)について、主要評価項目である「臨床状態の改善」を達成できなかったと発表した。

 COVACTA試験は、COVID-19関連肺炎に対するアクテムラの治療効果を評価するため、親会社のロシュ社(スイス)が進めていたもの。米国、カナダ、欧州で実施され、日本は参加していない。

■「退院までの期間」は短縮

 同試験では、COVID-19関連肺炎による重症成人入院患者を対象に、アクテムラ投与群(アクテムラ静脈内投与+標準的な医療措置)の有効性・安全性をプラセボ投与群(プラセボ+標準的な医療措置)と比較。

 試験データを評価した結果、主要評価項目の「臨床症状の改善」、主要な副次評価項目の「4週目時点の死亡率の差」は未達。「退院までの期間」はアクテムラ投与群で短縮がみられた(アクテムラ投与群20日、プラセボ投与群28日)が、主要評価項目未達のため統計学的な有意差は判断できなかった。アクテムラに対する新たな安全性のシグナルは認められなかったという。

■中外製薬「国内治験の設定に活かす」

 今回の試験結果について中外製薬の奥田修社長は「主要評価項目は達成できなかったが、COVACTA試験により、重症COVID-19関連肺炎患者に対するアクテムラによるIL-6シグナル阻害の効果・安全性について有用なデータが得られた」とコメント。

 ロシュはCOVACTA試験のほかに、アクテムラと抗ウイルス薬レムデシビル(ギリアド・サイエンシズ)との併用療法を評価するREMDACTA試験などCOVID-19関連の複数の臨床試験を進めているが、中外製薬はこれらとは別に、重症COVID-19関連肺炎患者を対象にアクテムラの国内治験を実施中。「COVACTA試験のデータの詳細な解析で得られた知見を国内治験の設定などに活かしていく」(広報IR部)としている。