今なお語り継がれるあの大ヒット作が“帰還”。映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが『トップガン マーヴェリック』を解説します。

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 待ちきれない! とは、こういうことをいうのか?……と、誰しもが思ったのではないかというぐらい、観客数の伸びが著しいこの作品。まさに、待ちに待った甲斐がある、素晴らしい出来だ。

 1986年、前作『トップガン』から36年。最初に続編のニュースが飛び込んできたとき、公開予定は2019年だった。それが製作の都合で2020年になり、コロナの影響でまた延期となって2021年7月に全米公開……のはずが、さらに延びて、とうとう2022年に。

 前作が公開されたとき、町にはあのジャケットに“あのサングラス”の若者があふれ、“あのサントラの曲”がガンガン流され、“あのカワサキのバイク”も注目されて、まさに大ブームを巻き起こした。今回、暑さに向かう時期の公開にもかかわらず、“あのジャケット”のいで立ちで、劇場に出かけているファンも結構いるらしい。蒸れるのではないか…と心配してしまうが、それがファンの愛情の示し方というものなのだろう。

 この作品、オープニングから、前作の主題歌「デンジャーゾーン」が流れてくるまでの導入部が、もう鳥肌もの。前作へのオマージュというか、思い入れに溢れていて、胸キュン!

 前作の公開からずいぶん時間が経っているにもかかわらず、今なおポップカルチャーの一部であり続ける『トップガン』。その続編への期待は、ずっと前からあった。

 2010年頃、前作監督のトニー・スコット、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー、主演のトム・クルーズの三人が揃って一緒に『トップガン』を観て、続編への動きが出てきた矢先の2012年8月19日、トニー・スコットが帰らぬ人に。そして、トニーの作品に沿うものでなければ続編は作らないというのが、トム・クルーズとジェリー・ブラッカイマーの一致した思いになった。

 前作では、実際にF-14トムキャットに乗って大空を駆け巡った。今作はF/A-18で、“生還の可能性ゼロ”のミッションに挑むという。撮影では、究極のリアルを求め、CGやスタントマンを使うことなくトム・クルーズ自ら臨んだ。機内にIMAXカメラを搭載して撮ったシーンの数々。事前に訓練を受けたとはいえ、強大な“G”(いわゆる重力加速度)がかかった役者たちの体は極限状態に陥ったようだ。

 一瞬、これは『トップガン』ではなく『ミッション・インポッシブル』ではないのか? マーヴェリックではなく、イーサン・ハントなのではないかと思えるほどに、不可能を可能にしていくトム・クルーズ。

 物語は、アメリカ海軍のエリート飛行士訓練学校に、極めて特殊なパイロット技術をもつマーヴェリック(トム・クルーズ)が教官として帰ってくるところから始まる。目的は、とうてい不可能と思われるミッションの成功。一人の犠牲者も出さずに帰還すべく、若き後輩トップガンたちを3週間かけて鍛え上げるために呼び戻されたのだ。

 その選抜メンバーの中に、かつてマーヴェリックとペアを組み、事故で命を落とした親友、ニック“グース”ブラッドショウの息子のブラッドリー“ルースター”ブラッドショウ中尉(マイルズ・テラー)がいた。親友を失った喪失感と責任を背負って生きてきたマーヴェリックはルースターを息子のように愛するが、ルースターは、まだわだかまりを消すことはできていない……。

 前作では、ケリー・マクギリス扮するチャーリーと恋をしたマーヴェリック。今回のお相手はシングルマザーで、飛行士たちが集まるクラブのオーナーのペニー・ベンジャミン(ジェニファー・コネリー)。お互い、幾度もの恋と別れを経て再会したことを、運命のようにも感じている。

 女性といえば、今回、トップガンのメンバーの中に女性のナターシャ“フェニックス”トレース大尉(モニカ・バルバロ)が登場する。実は、前作の頃には女性は戦闘に参加できなかったが、1993年に戦闘禁止が解除され、数年後、女性パイロットが誕生したのだとか。時代は変わっていくのだ。

 前作でトム・クルーズと人気を二分するアイスマン役を演じたヴァル・キルマー。咽頭がんの闘病生活で、以前のように声を出せなくなったという。そして2021年夏、声のクローンを作成するAI技術によって再び話せるようになったとのニュースに接し、どういった形での出演になるのか心配していたのだが、出世して海軍大将になっての実に素晴らしい再登場で、胸が熱くなった。

 主題歌「Hold My Hand」は、レディー・ガガの作品。最近は女優としても存在感を発揮しているが、歌手としても、8年ぶりの来日公演が、今年9月3・4日に埼玉県所沢市の西武ドーム(ベルーナドーム)で開催されることが決まっているなど大活躍だ。

 監督のジョセフ・コシンスキーは2010年『トロン:レガシー』で長編監督デビュー。今回、トニー・スコット監督のレガシーを受け継ぎ、新たな伝説を作ったこの作品は、間違いなく彼の代表作になるだろう。

『トップガン マーヴェリック』は、音響が良くて画面が大きい“映画館”で観るべき作品だと思う。とくに、「F14」か「F18」(座席番号)の席での鑑賞が人気なんだとか。記録づくめの大ヒット。その記録をどこまで伸ばすのか、本当に楽しみだ。(増井孝子)

※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオdeショー!』、「おたかのシネマdeトーク」より