兵庫県のほぼ中央部に位置する多可町で、敬老の日(9月第3月曜日、今年は21日)を挟む9月20日から22日までの3日間、「全国おじいちゃんおばあちゃん子ども絵画展」が開かれた。多可町の八千代コミュニティプラザ玄関脇には「敬老の日提唱の地」の記念碑が立つ。今年31回目を迎えた絵画展は、敬老の日発祥のまち・多可町が「敬老文化」を全国に発信する伝統行事だ。

 話は1947(昭和22)年にさかのぼる。多可町の前身の一つ、多可郡野間谷村の村長に35歳の若さで当選した門脇政夫さん(後に八千代町長、兵庫県議)は一計を案じた。村主催の敬老会だ。長年にわたって社会に貢献してきたお年寄りに敬意を表すとともに、培ってきた知恵や人生経験を伝えてもらう場を設けることが目的だった。期日は農閑期で、気候的にも過ごしやすい9月15日と決めた。

多可町の八千代コミュニティプラザ玄関脇に立つ「敬老の日提唱地」の記念碑=多可町八千代区中野間
多可町の八千代コミュニティプラザ玄関脇に立つ「敬老の日提唱地」の記念碑=多可町八千代区中野間

 翌年に「国民の祝日に関する法律」が施行される。「こどもの日と成人の日はあるのに、老人の日がない。がっかりした」という門脇さんは、2回目の敬老会のあいさつで9月15日を「としよりの日」と定め、村独自の祝日にすることを提案した。さらに「祝日制度に欠陥がある」と県や国に働きかけを続け、1966年の法改正で実を結ぶ。敬老の日は建国記念日、体育の日とともに祝日に加えられた。

 ちなみに野間谷村が開いた敬老会の対象は55歳以上だった。当日は村中から集めた自動三輪車を送迎車にし、公会堂で食事や八千代歌舞伎でもてなしたという。

 今年31回目を迎えた絵画展。おじいちゃん、おばあちゃんの日常の姿を題に、4歳児から中学生までを対象に募った絵画展には、40都道府県から3646点が寄せられた。従来は応募全作品を展示していたが、コロナ禍の今年は多可町内の作品と入選以上合わせて1370点に絞った。会場のガルテン八千代体育館には多可町が企画・制作した曲「敬老のうた・きっとありがとう」(歌・多可少年少女合唱団)が流れた。

会場のガルテン八千代体育館には多可町内の幼児、小中学生の作品と入選以上の力作合わせて1370点が展示された=多可町八千代区中野間
会場のガルテン八千代体育館には多可町内の幼児、小中学生の作品と入選以上の力作合わせて1370点が展示された=多可町八千代区中野間

 第1回から審査委員長を務める画家の来住しげ樹さんは、「この絵画展はおじいちゃんおばあちゃんと子どもの絆を確認する機会でもある。描く技法や構図、色彩の構成も大切だが、祖父母と子どもたちの心の交流ができた作品こそが、この絵画展の趣旨にふさわしい」と講評した。

最優秀の文部科学大臣賞を受けた小学校6年生の作品「暑さに負けず、仕事をがんばるおばあちゃん」。夏の日中、庭の植木を剪定(せんてい)する祖母を描いた。(多可町教育委員会提供)
最優秀の文部科学大臣賞を受けた小学校6年生の作品「暑さに負けず、仕事をがんばるおばあちゃん」。夏の日中、庭の植木を剪定(せんてい)する祖母を描いた。(多可町教育委員会提供)

 敬老の日は土曜日から3連休にするハッピーマンデー制度で、2003年から日付が固定されず、9月の第3月曜となった。敬老の日の提唱者、門脇政夫さんはルーツとなった「としよりの日」を農閑期で気候的にも良いことから9月15日に決めた。生前、ハッピーマンデー制度に対して「親に相談もなく、子どもの誕生日を勝手に変えられたような思い。日付の重みを知ってほしい」と残念がっていた。