宝塚市で2020年6月、家族ら4人がボーガン(=洋弓銃)で撃たれ死傷した事件で、殺人・殺人未遂などの容疑で逮捕、送検され、事件当時の精神状態などを調べるため約半年にわたる鑑定留置を終えた無職の男(24)について、神戸地検が刑事責任能力を問えると判断し、22日にも起訴することが、捜査関係者への取材でわかった。男の鑑定留置期間は2020年7月6日〜2021年1月14日。当初は11月までの4か月とされたが2度延長していた。

神戸地検は男の認否について明らかにしていない
神戸地検は男の認否について明らかにしていない

 男は逮捕直後、容疑を認めて取り調べにも淡々と応じていたが、神戸地検は3人死亡という事件の重大性と、ボーガンを用いた殺害行為といった異常性、また殺人・殺人未遂罪で起訴した場合に裁判員裁判の対象事件となることから起訴前の精神鑑定が必須であると判断した。

 神戸地検幹部は「親族間の殺人という形態で、第三者が理解しがたい特段の情状があったとしても、犯行時の精神状態を分析する必要があった」としている。

 男が試し撃ちで標的にしたとみられる本を数秒間撮影したスマートフォン動画を、兵庫県警が押収していたことも判明。本には穴が空いており、ボーガンの威力を確認していた可能性がある。捜査関係者は「明確な殺意とそれに基づく計画性があったことを示す重要な証拠だ」と話した。

宝塚・ボーガン殺人事件現場付近〈2020年6月4日〉

 男は2020年6月4日、宝塚市の自宅で、同居する祖母(当時75)と弟(当時22)、別居中の母(当時47)をボーガンで矢を発射して殺害、伯母(50)に大けがをさせたとされる。兵庫県警は伯母への殺人未遂の現行犯で逮捕、その後祖母ら3人への殺人容疑で再逮捕された。

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 鑑定医による聞き取りや検査を行う「鑑定留置」をめぐっては、殺人事件で被害者が多数にわたる場合など、事件の重大性に鑑みて長期化するケースがある。

 2017年2017年7月、神戸市北区で起きた5人殺傷事件では被告の男(29・公判前整理手続き中)について神戸地検が2017年9月〜2018年5月、2度の延長を経て約8か月間実施。この結果を受けて刑事責任能力があるとして、殺人・殺人未遂罪などで起訴した。

 2019年7月、36人が犠牲となった京都アニメーション放火殺人事件の被告の男(42・起訴後勾留中)は事件発生直後、京都市伏見区の京アニ第1スタジオ近くで警察官に取り押さえられた。しかし自らも放火の際に重いやけどをしていたため、約10か月間、入院治療を受けた。取り調べや勾留に耐えられるまでに回復したと判断され、京都府警が殺人などの容疑で逮捕したのは2020年5月27日だった。京都地検は6月9日から約6か月間の鑑定留置で刑事責任能力が認められると判断、12月16日に殺人・現住建造物等放火など5つの罪で起訴した。