例年ならば、全国の神社・仏閣で各界のスターが裃(かみしも)姿で高段から豆をまく冬の風物詩、節分。

過去の中山寺・節分会の豆まき〈※画像提供・中山寺〉
2021年の中山寺・節分会 福豆は僧侶による手渡しに

 観音霊場・安産祈願の寺院として知られる宝塚市の真言宗大本山・中山寺で2日、恒例の「星祭節分会(ほしまつり・せつぶんえ)」が開かれたが、華やかなタカラジェンヌの姿はなかった。毎年本堂の前に高さ5メートル以上のやぐらを組み、タカラジェンヌが福豆に福を授かろうと多くの参拝客で賑わう。今年は参拝者への福豆は1万2000セットの数量限定で用意され、豆まきではなく、僧侶が手渡しで授与した。

中山寺では1万2千セットの福豆を用意
「密を避けるため、どうぞ順序良くお並びください」僧侶が1人1人に福豆を授与

 大阪市内から訪れた20代の夫婦。中山寺に安産祈願を兼ねて節分会に。「5か月です。元気な赤ちゃんが生まれますようにと祈願しました。コロナ禍で毎日神経質になりがちで、もうすぐ産休に入りますが、夫は絶対に(コロナに)ならない、うつさないように徹底しています。緊急事態宣言、長引けば長引くほど『慣れ』が出てしまうので、今回の延長は、気を引き締める意味で大事だと思います」と話した。

安産祈願の寺院らしく、妊娠中の女性に配慮してエレベーターを設置
赤ちゃんに授ける愛情は「心の栄養」安産腹帯を手に

 また、母娘2代で大の宝塚歌劇ファンという神戸市灘区の30代と70代の女性は「タカラジェンヌの方々が来られないのは残念ですが、本来の節分の厳かさを体感しました。目頭が熱くなるというか……まだまだ我慢の日々が続くかもしれませんが、来年はジェンヌさんたちのきらびやかな姿を見たいです」と期待を寄せた。

僧侶によるお練り 2日は13時と15時に法要が厳粛に営まれた
大般若転読(だいはんにゃ・てんどく) この間に本堂前で鬼が舞う
大般若転読(だいはんにゃ・てんどく) この間に本堂前で鬼が舞う

 例年行われるタカラジェンヌによる豆まきは宝塚大劇場にほど近い中山寺ならでは。また古くから伝わる鬼を払う(追儺=ついな)儀式「鬼やらい」は、音楽を交えた現代風にアレンジしたものタカラジェンヌが寸劇仕立てで演じるなど、毎年多くの参拝者でにぎわうが、ことしは僧侶が観音菩薩の化身となり鬼を諭した。

貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)三匹の鬼が本尊・十一面観音菩薩に諭(さと)されて・・・
福・禄・寿の善神に変わる(画像・奥の僧侶が石堂恵遼執事)

 その僧侶が執事の石堂恵遼(いしどう・えりょう)さん。石堂さんは「確かに、宝塚ならではの華やかさが1つの風物詩です。しかしこのコロナ禍、密は絶対に避けなければなりません。こういう時代であるからこそ、参拝された方々は中山の観音さまに救いを求められ、私たち僧侶はその祈りを形にすることが役目です。そうした意味では華やかさはなくとも原点に立ち返る、いい法要でした」と振り返る。

中山寺執事・石堂恵遼さん

 ここ数日、豆まき1つ取っても、そのあり方を考えされられた2021年の節分、石堂さんは「豆=魔滅(まめ・まめつ)、文字通り魔を滅するわけです。日本人が得意とする言葉の言い回し、言葉遊びです。折しもアニメの『鬼滅の刃』ブームですが、日本人特有の魔や鬼を怖れる感覚と、それらの退散を願う気持ち、さらに新型コロナウイルスの収束を誓い、再び華やかで楽しい節分会が迎えられますように」と話した。

「星祭」〜星に除災招福を祈る法会 堂内に北斗七星や二十八宿などを配した星曼荼羅を掲げる
ソーシャルディスタンスを保ちながら本堂へ

 中山寺では毎年4月、聖徳太子が開山した当時から続くとされる伝統の法要「無縁経大会式(むえんぎょうだいえしき)」が開かれ、菩薩(ぼさつ)の来迎を表現する行列では、きらびやかな衣装を着て菩薩に扮(ふん)するタカラジェンヌが、稚児装束の子供らと境内や本堂を練り歩く(2020年は中止・2021年は未定)。

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「野をもすぎ里をもゆきて中山の 寺へ参るは後の世のため」《中山寺・御詠歌》
〜幾度となく、野山や村里を越えて、はるばる中山寺へ。それは最後にたどり着きたいところがあるから。今の時代に置き換えれば、私たちができる範囲でコロナ対策を施すことが、早い収束と後々安心できる社会を取り戻せる、といったところだろうか。

2021年の節分は徹底した感染防止対策を施した
華やかな節分会を心待ちに

 世間は1年以上にわたり新型コロナウイルスに翻弄されている。どこかで区切りをつけて前を向きたい。2月2日の節分は124年ぶり、さらにコロナ禍という「2つの特別」。その節目に魔が入らぬよう願って「鬼は外、福は内」と鬼や魔を退治する、この風習の意味を改めて考えさせられる日となった。

 2日、神戸・大阪の日中の最高気温は13.7度〜14.2度と3月中旬から下旬並みに。中山寺の梅林や、枝垂れ桜の開花も、この暖かさで早まりそうだ。

『2021年・特別な節分』《完》