2016年6月に元社員の男性(当時20)が自殺した洋菓子メーカー「ゴンチャロフ製菓」(本社・神戸市灘区)が、遺族に対する謝罪や、賠償金を支払うなどの条件で6月、和解した。

会見する遺族と代理人弁護士ら<2021年7月2日・神戸市内>
会見する遺族と代理人弁護士ら<2021年7月2日・神戸市内>

 遺族の申し立てを受けた西宮労働基準監督署は、長時間労働や上司とのトラブルが原因だったとして、2018年6月に労災認定したが、ゴンチャロフ製菓は「過重労働やパワハラの認識はなかった」と事実関係を否定していた。しかし遺族の代理人弁護士らが、男性の元同僚らへ聞き取りを行うなどして、その結果を開示し、パワハラの事実を認めたという。

 そして、ゴンチャロフ側が遺族への賠償金を支払うほかに、社長による謝罪、問題の上司や監督者であった工場長の懲戒処分を行うことなどの条件で和解した。

「息子に『あなたは悪くないよ』と言いたい」母親は涙ぐんだ<2021年7月2日・神戸市内>
「息子に『あなたは悪くないよ』と言いたい」母親は涙ぐんだ<2021年7月2日・神戸市内>

 男性は高校卒業後の2014年4月に正社員としてゴンチャロフ製菓に入社し、神戸市東灘区の工場でゼリーやチョコレートの製造に従事していた。労基署によると、男性については2015年9〜12月、1か月あたり81〜103時間の時間外労働が認められたという。
 また2015年10月以降、十分な指導を受けずに、不慣れなまま責任者としてチョコレート製造業務を担当するようになり、製造したチョコレートに”つや”が出ず、大量の廃棄品が出た際に、上司が男性の能力不足のせいだとして大声で怒鳴るなど厳しい叱責を繰り返したことがわかった。
 男性はこうした業務上の負荷が重なり、通院歴はないものの、食欲が減退し、部屋に閉じこもりがちになっていた。自殺する約半年前には「うつ病」を発症していたと認定された。

「表現する言葉もないほどの最悪の日」母親は息子の自殺した日をそう語った(※文中の個人名は遺族の許可を得て掲載しています)
「表現する言葉もないほどの最悪の日」母親は息子の自殺した日をそう語った(※文中の個人名は遺族の許可を得て掲載しています)

 代理人弁護士によると、2020年9月の労災認定基準の改定では、上司によるパワハラも一つの類型に入り、かつ「必要以上に長時間にわたる厳しい叱責や、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責」だけでも、その程度によっては、労災認定されるようになったという。

 和解までに5年もの歳月を要したが、母親はラジオ関西の取材に「息子の死を、頭では理解していても心では拒否していた。やっと息子の尊厳を守ることができた。そして今後、息子のように苦しむ人たちを少しでも減らすための取り組みや規制もできた。でも命や時間は二度と戻らないから、被害者や加害者になることがないよう精一杯生きてほしい。今生きている人たちに心からそう願う。親として今後も企業の責任を問い続けたが、やはりパワハラがあった。隠ぺいがあった。5年経って謝罪、和解に至ったのは(会社の体質など)自らの非を認めたということ。若い社員が使い捨てにされるような社会であってはならない」と話した。

母親は和解条件に「パワハラの事実を認め、謝罪を」と求め続けていた<2021年7月2日・神戸市内>
母親は和解条件に「パワハラの事実を認め、謝罪を」と求め続けていた<2021年7月2日・神戸市内>

 ゴンチャロフ製菓の光葉正博・代表取締役社長は「今後は、二度とこのような悲劇を繰り返さないために、社内にコンプライアンス委員会を設置し、被害申告者又は目撃者から速やかに内部通報をすることができる制度を構築するなど、ハラスメント被害防止に向けた 取り組みを行うと共に、業務上災害の主因となる恒常的な長時間労働の縮減にも取り組む」とコメントした。