ゲリラ豪雨による増水で子どもを含む5人が死亡した神戸市灘区の都賀川で起きた水難事故は28日、発生から13年を迎え、事故現場では「犠牲者を偲ぶ会」が開かれた。

「都賀川水難事故犠牲者を偲ぶ会」多くの千羽鶴と献花<神戸市灘区 都賀川甲橋>
「都賀川水難事故犠牲者を偲ぶ会」多くの千羽鶴と献花<神戸市灘区 都賀川甲橋>

 2008年7月28日、朝から快晴だった神戸市の上空。しかし灘区は午後3時前に突然、激しい雷雨に襲われた。水位は10分で約1.3メートルも上昇、津波のような濁流が襲い、子ども3人を含む5人が死亡した。

浸水時の都賀川<※画像提供・谷口美保子さん>
浸水時の都賀川<※画像提供・谷口美保子さん>
晴天時の都賀川 には水浴びをする子どもたちの姿も
晴天時の都賀川 水浴びをする子どもたちの姿も

 事故で犠牲になった子どもと同じ学童保育所に子どもを預けていた神戸市の谷口美保子さんは、市民団体「7月28日を『子どもの命を守る日に』実行委員会」を事故の翌年・2009年に立ち上げた。そして「二度と事故を起こさないために、活動で得た知識や教訓を多くの人と共有したい」と訴える。

手前が谷口美保子さん
手前が谷口美保子さん
近隣在住の子どもたちも「偲ぶ会」に参加した
近隣在住の子どもたちも「偲ぶ会」に参加した

 実行委員会は地質学や気象、防災の専門家の助言をもとに子どもの命を守る取り組みについて調査を続け2018年、冊子にまとめた。事故当日の増水の様子を近隣住民ら14人の証言とともに、時系列で振り返った。さらに都賀川がほかの川とは違い、いかに傾斜が急であるかを図で示すなど、よりわかりやすい形で避難のあり方を問いかけている。

神戸市立灘区民ホールでのパネル展
神戸市立灘区民ホールでのパネル展

■親水公園、雨が降ると急に増水

雨が降ると急に増水する都賀川
雨が降ると急に増水する都賀川

 当時「100年に1度」ともいわれた大雨だったが、もともと水害が多い地域だったため、都賀川は雨水を海に流す排水溝として活用され、のちに水に親しむ親水公園として整備された歴史がある。こうしたことから都賀川は地元で「雨が降ると急に増水する川」として知られる。兵庫県は都賀川の事故後、大雨洪水注意報・警報が発令さると点灯する回転灯を設けるなどした。

■この日は「安全に向けて気持ちをリセット」能勢文夫さん

能勢文夫さん「ここに来て悪夢を思い出し、安全への思いを誓う」
能勢文夫さん「ここに来て悪夢を思い出し、安全への思いを誓う」

 大阪府吹田市の建設会社経営、能勢文夫さんも追悼の集いに訪れた。能勢さんは当時、都賀川の河口から約1.5キロ地点の山手幹線に架かる「新都賀川橋」の耐震補強工事中だった。突然の雨で撤収作業を始め、最後に残った能勢さんの眼前に上流から濁流が迫った。「このままでは死んでしまう。もうダメだ」。とっさに橋脚にしがみつき約30分後、レスキュー隊に救出された。

 能勢さんは毎年都賀川へ訪れる。「この夏も、水害のニュースを聞くたびに悲しい思いをします。最近では熱海の土石流。油断禁物。絶対的な安全はないんだということを肝に銘じてほしいです。そして天候やその土地の状態、事前に調べておくことが必要な時代なんです。そのためにも、毎年7月28日は、気持ちをリセットして、改めて安全について考える日にしています。ここに来ると、あの悪夢を思い出すと同時に、気が引き締まります」と話した。

コロナ感染防止の観点から「偲ぶ会」は細心の注意を払いながら執り行われた
コロナ感染防止の観点から「偲ぶ会」は細心の注意を払いながら執り行われた
神戸市立長峰中学校コーラス部 2年ぶりに「偲ぶ会」に参加した
神戸市立長峰中学校コーラス部 2年ぶりに「偲ぶ会」に参加した