兵庫県には、文化庁が認定した「日本遺産」が9件、国指定史跡のお城が22城あり、いずれも全国最多を誇る。また、1000を超す城跡や播磨国風土記など、個性豊かな地域遺産を数多く有している。そうした兵庫の歴史を学びながら、周辺のおすすめスポットを計15回のシリーズで紹介する。

【第3回】播磨国風土記に見る、印南別嬢と日岡陵

 8世紀初めに編さんされた『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』。地域ごとの、神と人とのユニークな物語を現代に伝えている。その中に、印南別嬢(いなみのわきいらつめ)についての記述がある。ヤマトから播磨に乗り込んできた景行天皇から求婚される別嬢。初めは南毗都麻(なびつま)の島に逃げたものの、やがて景行天皇と結婚し、生まれた双子の兄弟のうち弟・小碓命(おうすのみこと)が、後の日本武尊命(やまとたけるのみこと、仲哀天皇の父)とされる。

写真:加古川観光協会
日岡山古墳群(写真:加古川観光協会)

 別嬢が亡くなると、墓は日岡山(加古川市)に造られた。しかし、遺体を埋葬するために印南川(現在の加古川)を渡る際、突然つむじ風が吹き、遺体は川に沈み、消えてしまったという。何とか捜し出された遺品、化粧箱の「匣(くしげ)」と「褶(ひれ)」と呼ばれるショールだけが葬られたことから、日岡陵は「褶墓」とも呼ばれている。

写真:加古川観光協会
日岡御陵(写真:加古川観光協会)

 この日岡陵古墳は日岡山古墳群を構成する前方後円墳で、長さは約80メートル。実際の被葬者は明らかでないが、宮内庁は日岡陵(ひおかのみささぎ)として、第12代景行天皇の皇后である播磨稲日大郎姫命(はりまのいなびのおおいらつめのみこと)の陵と定めている。この播磨稲日大郎姫命は、『播磨国風土記』のほか『日本書紀』や『古事記』などにも微妙に異なる名前で登場するが、すべて同一人物とされる。名前のすべてに共通する、「いなび」あるいは「いなみ」は、古代からの地名「播磨国印南(いなみ)郡」に由来する。

【参考文献】
・兵庫県公式観光サイトHYOGO!ナビ
・文化庁日本遺産ポータルサイト

◆おすすめスポット
「タテイト珈琲店」(加古川市加古川町)

 JR加古川駅から西へ車で10分ほど。木やトタンが張られた小屋のような外観で、初めは喫茶店とは気が付かず通り過ぎてしまいそうだ。店に入ると、オーナーの田中雅経さんが柔らかな笑顔で迎えてくれる。

タテイト珈琲店(外観)
タテイト珈琲店(外観)

 まず目に飛び込んでくるのが、カウンターや棚に並ぶ本の数々。すべて田中さんが選んだものだといい、小説やエッセイから雑誌まで幅広く取り揃える。コーヒーは通常、『軽め』『深め』『タテイト(特に深煎り)』の3種類をラインナップ。注文を受けてから、田中さんがハンドドリップで一杯ずつ、お客さんの目の前で丁寧にいれる。本を読みながらカップを傾けるもよし、店主と和気あいあいとおしゃべりを楽しむのもよし、その日の気分に合わせた楽しみ方ができそうだ。

「タテイト珈琲店」を営む田中雅経さん。コーヒーは1敗ずつ丁寧にハンドドリップ
「タテイト珈琲店」を営む田中雅経さん。コーヒーは1杯ずつ丁寧にハンドドリップ
「タテイト珈琲店」では、器にもこだわる
「タテイト珈琲店」では、器にもこだわる

 田中さんはもともと、大手企業のサラリーマンとして働いていたが、「60歳(定年)を想像したときに、それまでぶら下がることもできるけど、自分の足で歩きたい」と一念発起、2018年5月に店をオープンさせた。店は田中さんの趣味がいたるところにちりばめられている。例えば店内にはジャンルを問わずレコードが流れていて、レコードジャケットが壁に飾られていたり、田中さんが好むというストリートファッションを象徴するような、NBA(米プロバスケットボールリーグ)で活躍する選手のユニフォームがかけられていたり……。田中さんは、「自分自身が飽きてしまってはいけないので」と笑うが、不思議と雑多な印象は受けず、センスが光っている。

「タテイト珈琲店」店内のようす
「タテイト珈琲店」店内のようす
「タテイト珈琲店」では、Tシャツやアートの販売も
「タテイト珈琲店」では、Tシャツやアートの販売も

「つらいこともあったサラリーマン時代でしたが、そんなときに足しげく通っていたのが喫茶店。自分自身の受け皿にも、他の誰かの受け皿にもなれるよう、まずは10年やりたいですね」という田中さん。街中の喧騒とは一線を画した店内で、自分自身をいたわる、心休まる時間を過ごせることは間違いないだろう。

タテイト珈琲店(看板)
タテイト珈琲店(看板)