「日本のペスタロッチ」と呼ばれた教育家・東井義雄さん(1912-1991)の記念館が兵庫県豊岡市但東町にあるのをご存じだろうか?  劇作家・演出家の平田オリザさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)では東井義雄記念館の館長に東井さんの人柄や生前に語っていた子どもへの思いなどを聞いた。

 東井さんは兵庫県豊岡市但東町にある寺の長男として生まれた。日本の教育が能力主義に傾倒していく頃、村を捨てて外に流失してしまう学力ではない「村を育てる学力」を提唱。当時の生活綴方(つづりかた)教育や思想界に大きな影響を与えた。豊岡市民プラザでは8月にこの思想を題材とした市民参加の演劇公演も行われた。

教育家・東井義雄さん

 東井義雄記念館は京都から兵庫県の入り口となる豊岡市役所但東庁舎の一角にある。27年前、記念館設立の寄付を募ったところ全国から3000人近くの方々が反応を寄せた。1994(平成6)年7月に開館、現在に至るまで教育関係者のみならず「東井さんが残した 言葉に触れたい」と全世代の人々が訪れる場所となった。館内には東井さんの著書や関連図書、遺墨や遺品のほか教え子や同僚たちの証言を収録した映像を見ることができる。

東井義雄記念館

 4年前から館長に就任した東井浴子さんは「私は東井義雄の長男に嫁いだのですが、おとなしい方でした。当時はすでに著名な教育家でしたので、全国から手紙が届くのですが、すべてに返事を書かれていましたし、毎日「字」を書いていました。夕方、町のポストに投函するのが日課でした。若いころは体が弱かったそうですが、出会った頃はバス停までの往復は自転車。かざらない人でした」と生前の義雄さんを振り返った。

東井義雄記念館の東井浴子館長

 番組パーソナリティーの平田さんは「東井先生は詩人でもいらしたので、たくさんの言葉を残されている。もちろん私も影響を受けました。東井先生に(芸術文化観光)専門職大学が豊岡にできたことをご報告したい気持ちでいます」と思いを述べた。

 博物館や美術館が近隣になかったときには「幻燈」で地域の人々に文化をしらせたという東井義雄さん。『ふるさとには愛がある』と村に育つ子どもや郷土への愛を惜しみなく与えた教育家の足跡にふれ、「ストレスがたまる時代ではあるけれど、東井の言葉に救われることもあります。いい言葉に出会い、いい人に出会うことがあれば人生前向きになれるのではないでしょうか」と東井浴子館長が述べると平田さんも「より多くの方に東井義雄さんを知っていただきたい。ぜひ、但東町に来たらシルク温泉やたまごかけご飯を食べて東井義雄記念館にも立ち寄って欲しい」と締めくくった。