旧優生保護法(1948〜96年)下で障害者らに不妊手術が強いられた問題で、兵庫県明石市議会は29日、国の制度では対象外となる配偶者と中絶被害者も含めて支援金300万円を支給するとした全国初の被害者支援条例案を否決した。泉 房穂市長はラジオ関西などの取材に「30日にも修正案を提出、10月13日の本会議での可決を目指す」と述べた。

旧優生保護法被害者支援条例案 賛成9、反対12で否決<2021年9月29日 明石市議会>
旧優生保護法被害者支援条例案 賛成9、反対12で否決<2021年9月29日 明石市議会>
賛成意見を述べる議員<2021年9月29日 明石市議会>
賛成意見を述べる議員<2021年9月29日 明石市議会>

 条例案は泉市長の主導で提出され、地方政治からの問題提起に注目が集まったが、市議会(定数30、欠員1)での採決は議長を除き、1人が欠席、自民系会派10人と他の2人が反対、公明6人が退席した。自民系最大会派が「国家賠償を求める裁判の結論が確定していない、いわゆる係争中の段階で市民の税金を使って補償することには疑問だ」「給付額の300万円の根拠や支援対象となる人が不明確」などとして反対、第2会派の公明党6人が継続審査を求めて退席した。採決では賛成9、反対12となった。一方、「国や県による支援は不十分であり、明石市独自の条例は被害者の尊厳を回復するものだ」との賛成意見も出た。

強制不妊手術を受け国家賠償請求訴訟を起こした(係争中)明石市在住の夫妻も見守る<2021年9月29日 明石市議会>
強制不妊手術を受け国家賠償請求訴訟を起こした(係争中)明石市在住の夫妻も見守る<2021年9月29日 明石市議会>
泉房穂市長(前列右)は9月30日にも修正案を提出する
泉房穂市長(前列右)は9月30日にも修正案を提出する

修正部分として
▼否決された条例案では、戦前の国民優生法や旧優生保護法が改正された(母体保護法)後の被害についても幅広く対象としていたが、対象者の推計が困難になるといった反対意見を踏まえ、対象者を原則として旧優生保護法の被害に限る
▼施行日を議会会期中の2021年10月1日としていたが、案では具体的施行日を記さないーなどとする。

泉市長「国が、司法が動かぬなら地方行政からムーブメントを」
泉市長「国が、司法が動かぬなら地方行政からムーブメントを」

 被害者に一律320万円を支払う国の一時金支給法(2019年施行)については、金額の低さや対象を不妊手術に限っているなどの問題点が指摘されている。

 明石市には、旧優生保護法をめぐって各地で起こされた国家賠償請求訴訟のうち神戸地裁に起こした訴訟(一審・原告敗訴 控訴中)の原告で、聴覚障害のある夫妻(いずれも89)が暮らしている。29日、議会を傍聴した夫妻は条例の否決を手話通訳で知った。「障害者への配慮のなさをまざまざと感じた。強制不妊手術をさせられたこと自体を隠した半生を過ごした辛さを理解してもらえない社会が日本には残っている」と悔しさをあらわにした。