内需先細りの時代、中小企業は競争相手のいない新しい市場を開拓しなければ生き残れない─。そんな思いを胸に、人口減少とIT化で一層厳しさを増す今後の事業環境を見据えて、紙卸売の老舗がいま、ユニークな商品アイテムを増やしている。すべてに共通するのが「オリジナル環境素材」というキーワード。兵庫県加古川市に本社をおく釜谷紙業株式会社の釜谷泰造常務に、紙業界の現状や、同社の取り組みなどを聞いた。

釜谷紙業姫路事業所

――新型コロナウイルスの感染拡大は紙業界にどのような影響をもたらしたのか?

人口減と活字離れでかねてから新聞や書籍の需要が減っていたのが、昨年はコロナの煽りでさらに約20パーセントの需要が業界全体で消失した。折り込みチラシや旅行パンフレット、土産物の包装紙やパッケージが顕著な例だ。

――ネット通販の巣ごもり需要で段ボール業界の市場は拡大したのでは?

ネット通販は盛況で、当然、段ボール業界全体にプラス影響はあるが、当社も含め比率は大きくはない。通販の商品は1個ごとのサイズが小さいので、いくら個数が増えても工業製品用の売上に比べると大きくはなっていない。一方、工業製品用は多数の工場の操業度が低下した昨年は苦戦したが、今年は回復基調。あと2〜3年この傾向が続けば、業界も再び過去最高の市場規模に到達すると言われている。

――最近はオリジナルの環境素材に注力しているというが、どのようなものか?

第一に取り組んだのがストーンペーパー。「脱炭素」のニーズに適う新素材だ。一般のパルプ紙の主原料は木材だが、ペーパーとは言えこの原料は約8割が石灰石。残りはプラスチックだが2割程度に抑制されている。水と油に耐久性があり、折りにも強い。パルプ紙と同じ土俵での環境比較は難しいが、選挙の投票用紙などに使われるオールプラスチック製「合成紙」などに比べると石油原料の使用量や焼却時の二酸化炭素排出量が大幅に少ないのも特長だ。世界で唯一、台湾メーカーが製造し、当社が日本の輸入元として国内展開している。

ストーンペーパーで作られたデザイン性の高いノート
ストーンペーパーで作られたデザイン性の高いノート

――紙類以外の取り組みは?

当社発の長期抗ウイルス液「クリーンフィックス」がコロナ禍で多くの引き合いをいただいている。コロナウイルスを減らす液剤として一般的なアルコールや次亜塩素酸水などは乾くと効果がなくなってしまうが、クリーンフィックスは塗布後数か月から1年以上経過しても抗菌・抗ウイルス効果が継続する。実際に検査機関で検査したところ、2時間後にはウイルスが1千分の1未満に激減したということでJIS基準の最高評価を得た。施工業者を介さずにセルフで塗布できるという点も他にはない大きな特長。すでに京阪神の大規模ホールや鉄道車両、学校や保育園、病院など数百施設で採用されている。これも当社が発売元をしている。

抗ウイルス効果を長期間発揮する「クリーンフィックス」

それ以外には、国立大学とも提携しながら植物を原料としたバイオプラスチック事業にも着手した。スターチを利用したオリジナルの新素材で、近い将来は一部のポリなどプラスチックに代わる素材になりそうだ。

――世間で脱炭素や環境配慮はまだまだ掛け声先行の感があるが、見通しは?

イメージ通りの市場構築には遠いが、産業界は確実に騒がしくなっている。ヨーロッパのように一気呵成とはいかないまでも、生産者、消費者ともに大きな流れはいずれ必ずくる。「ブルーオーシャンを作るのが企業の社会的使命だ」との信念で、少しずつ布石を打っていきたい。

独自の環境素材に取り組む釜谷紙業株式会社の釜谷泰造常務

(取材・文=播磨時報社)