兵庫県神戸生まれの「hinotori(ヒノトリ)」をご存じだろうか。初の日本製手術支援ロボットだ。神戸大学と地元企業が力を合わせて開発し、昨年実用化にこぎつけたもので、今後の医療に貢献する存在として注目されている。

 ヒノトリは、鉗子(かんし)や内視鏡カメラを備えた4本のアームを備えており、医師が3D(3次元)画面を見ながら遠隔操作する。主に内視鏡手術向け。川崎重工業とシスメックス(いずれも神戸市中央区)の共同出資による医療用ロボット会社「メディカロイド」が、神戸大学の医師の意見や助言を反映させながら開発・製造した。名前は、兵庫県宝塚市ゆかりの漫画家である故・手塚治虫さんの名著『火の鳥』にちなんでつけられたという。

国産初の手術支援ロボット「hinotori」(画像提供:メディカロイド)

 昨年12月、開発の中心メンバーである藤澤正人医師(当時:神戸大学大学院医学研究科長、現:神戸大学学長)の執刀により、前立腺がん患者からの前立腺全摘手術を成功させた。神戸近郊以外では、徳島大学(徳島県徳島市)、和歌山県立医科大学(和歌山県和歌山市)でもすでに手術が行われており、今年9月新たに藤田医科大学病院(愛知県豊明市)でも始まった。

「hinotori」開発中心メンバーで、執刀医として初手術を成功させた神戸大学学長・藤澤正人氏(画像提供:神戸大学)

 また4月には、神戸大学、神戸市、メディカロイドにNTTドコモ(東京都)も加わって、世界で初めて商用5G《第5世代移動通信システム》を活用した「テレサージェリー(遠隔操作)」模擬実験がスタート。神戸市が推進する「神戸医療産業都市」とのさらなる連携も模索されている。

 操作習熟のためのトレーニングセンターも、昨年12月から今年にかけて神戸大学医学部国際がん医療研究センター内(神戸市)と藤田医科大学(豊明市)の2か所に開設。今後全国に複数の拠点を整備し、若手医師が手技を早く習得できる可能性を生かして普及に弾みをつけたい考えだ。

 藤澤氏は、9月29日に生出演したラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオDEショー!』で、「医療機器は7割から8割が外国製。とにかく国産の手術支援ロボットをと、企業や神戸市と一緒に作った。医療従事者も医療現場に携わるだけでなく、産業界と手を組んで新しい機器を開発する時代。神戸でヒノトリができたことを契機として、あとに続いてほしい」と語った。

 これまでアメリカ製の「ダビンチ」が独占状態だった手術支援ロボットの市場。「hinotori」が神戸から世界へと羽ばたき、新風を吹き込む存在となることを期待せずにはいられない。