多くの木々に囲まれている日本。国土の3分の2が森林という世界有数の森林国だ。国民の木材利用への関心・理解を深めるための「木材利用促進月間」(10月)も設けられている。

 この10月には『公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律』が改正された。これは、世界の潮流である“脱炭素化社会の実現”を目的に改正されるもので、従来の法律では、「公共建築物での木材利用の促進」を目的としていたが、今回から「民間建築物を含む建築物一般で木材利用を促進」と、範囲が広がった。

 兵庫県も、森林面積が県土の約70パーセントを占めている地域。兵庫県木材利用推進協議会・会長の野村俊彰さんは、地元産木材を見つめ直そうという思いを強くする1人だ。

 野村会長は、木材の利用が日々の生活に直結しているとして、次のように語る。「兵庫県の県土の約70パーセントを占める森林資源も、使わなければ、間伐などの手入れが行き届かなくなり、森林の持つ、水を蓄える機能や土砂崩壊を防止する機能が低下してしまいます。そうすると、私たちの暮らしに様々な悪影響を及ぼしてしまうんです。県内の木材を住宅、公共建築物、オープンカフェの机、イスなどで安定して利用することは、私たちの暮らしを守ることにもつながっていきます」。

布引貯水池
兵庫県林業会館(左)と、神戸・元町6丁目商店街にある木製ベンチ

 また、「木材は、燃えやすい、変形しやすいなどの不安を持つ方もいらっしゃいますが、近年は防耐火建築の技術開発が進み、都市部においても木造建築物が増加しています。品質、強度の明らかなJAS製品の普及も進んでいるので、安心して木材を使っていただければ」と呼びかける。

 木材利用の意義を語るのは、兵庫県農政環境部林務課の小野寺智子さん。「森林には二酸化炭素を吸収して地球温暖化を防止するような機能もありますが、こうした森林の働きをお金に換算すると、兵庫県の森林だけでだいたい1兆4000億円の価値があるんです」。

 ただ、機能が十分に発揮されるためには、「間伐などの手入れをしっかり行い、適度に木が生い茂る明るい森林にすることが必要」として、その整備の重要性を強調する。

「森林を手入れせずにほったらかしにしてしまうと昼間でも暗い森林になってしまい、光が差し込まずに木がひょろひょろに。根も張らないため、大雨が降った時に土砂が流れやすくなったり、強風で木が倒れやすくなるんです。特に、木材を得るために植林したスギやヒノキの人工林は、手入れして育て、切って利用し、また次の木を植える、というサイクルを回し続けることが大切なのです」(小野寺さん)。そのため、兵庫県ではこの循環を活性化し、森林の働きが発揮されるよう、県産木材の利用を推進している。

 2019 (平成31)年3月には「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立。これにより、「森林環境税」(2024年=令和6年度から課税)および「森林環境譲与税」(2019年=令和元年度から譲与)が創設されている。(林野庁ホームページより)

 これらは、温室効果ガスの排出削減目標の達成や、災害の防止のために、山奥で放置されてしまっている森林の整備や、森林の整備につながる木材の利用といった取り組みを行う財源として定められたものだ。

 この税金は、人工林の整備や里山の手入れ、木造施設の建設などに活用されている。兵庫県内でいえば、養父市や丹波市、香美町では人工林の間伐等の森林整備に使われているほか、神戸市やたつの市、姫路市では、市役所や農業振興センターといった公共施設の建築に兵庫県産の木材が使用されている。

森林環境譲与税の活用例(たつの市役所 多目的ホール)
森林環境譲与税の活用例(たつの市役所 新館 エントランスピロティ)

 いま、兵庫県産の木材を使って木造住宅を建てるとお得になる制度も設けられている。『県産木材利用拡大キャンペーン事業』は、新築木造住宅やリフォームに県産木材を一定割合以上使用した場合に、契約した工務店を通じて、最大50万円相当が還元される補助事業。もう1つは、兵庫県の木を一定割合以上使って住宅を新築・リフォームする場合に使える住宅ローン事業の『兵庫県産木材利用木造住宅特別融資制度』(通称:県産木造住宅ローン)。「このローンは金融情勢に左右されない長期固定で、金利も25年間ずっと0.8パーセントと県内トップクラスの低金利」(兵庫県農政環境部林務課の小野寺さん)だという。上乗せ条件等を満たした場合、最大で3200万円の融資が利用可能だ。

『県産木材利用拡大キャンペーン事業』は、ひょうご森づくりサポートセンターのホームページに、『兵庫県産木材利用木造住宅特別融資制度』については「兵庫県 木造住宅ローン」で検索して兵庫県のホームページに入ると、詳細な情報が掲載されている。

兵庫県産木材利用木造住宅特別融資制度

「森林を良くする・元気にする」と聞くと、どうしても木を植えることや木を育てることを想像する人も多いだろう。しかし、森林がその機能を十分に発揮するためには、小野寺さんの言うように、「『木を植えて育てて、切って使い、また次の木を育てる』というサイクルを回すこと」が大切。この機会に、兵庫県の森林やその木材の利用について考えてみては。

※ラジオ関西『わたしたちの暮らしと木材』2021年10月24日放送回より