「流行は繰り返されるもの」と言われるが、近年、若者の間では空前の“昭和レトロ”ブームが続いている。ファッションはもちろん、使い捨てカメラやレコードといったアイテム、さらにはシティポップなどの音楽面にもそのブームは広がっている。当時をよく知る大人たちにとっては“懐かしいもの”であるそれらは、まわりまわって、若者にとっての“新しく刺激的なもの”へと進化したようだ。

 では、なぜ今若者の間で“昭和レトロ”がトレンドとなっているのか? 計5万人以上のフォロワーを抱え、“ネオ”昭和を発信する女子大生・阪田マリンさん(20)に話をきいた。

阪田マリンさん

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

――阪田さんが昭和にハマったきっかけはなんですか?

まだCDしか知らなかった中学2年生の頃に、おばあちゃんの家にあったレコードでチェッカーズの『Song for USA』を聴いたことがきっかけでした。「針を落としただけで、こんなにもちゃんと音が鳴るんだ」と衝撃を受け、そこからまずは昭和音楽にどっぷりと浸かっていきました。

――レコード以外にも、昭和カルチャーにハマっていったんですか?

音楽の次にハマったのが、“角川映画”と呼ばれる作品でした。薬師丸ひろ子さん主演の『セーラー服と機関銃』や、浅野温子さんの『スローなブギにしてくれ』といった角川作品を観ていくなかで、劇中に登場する主人公たちのファッションにハマっていきました。バブルスーツなどの昭和ファッションは、今流行りのお店などでは売っていないんですが、古着屋やネットショップなどで安く手に入るので、今では何着も集めているんです。

バブルスーツを身にまとう阪田マリンさん

――他にはどんなものにハマっているんですか?

昭和に流行したアイテムも大好きで、特にマッチ箱を集めるのにハマっています。喫茶店を訪れた際には、必ず「マッチ箱をもらえますか」と店員さんにたずねていて、コレクションは今では50箱ほどになっています。

阪田マリンさんが集めるマッチ箱

――昭和アイテムというとさまざまですが、なかでも阪田さんにとってグッとくるものはなんですか?

特にグッとくるのは、黒電話ですね。今だと携帯電話を使えばすぐに好きな人に連絡が取れるんですけど、それって物足りないなと感じているんです。黒電話だと「親が出たらどうしよう?」と緊張したり、「何分までしか話せない!」と焦ったり、電話をかけるだけでドキドキして楽しいんじゃないかなと思うんです。

黒電話

――阪田さんの昭和カルチャー好きについて、周囲の同級生たちはどんな反応を示しているんですか?

やっぱり、「ちょっと変わってるよね」と言われますね。高校生の時に大好きだった『ビー・バップ・ハイスクール』に出てくる、不良の女の子が履いているスカートはだいたい丈が長いんです。それに対して、私たちの時代は“スカートは短ければ短いほどかわいい”という文化だったんですけど、私は夏服のスカートに冬服のスカートを継ぎ足して、ものすごく長くしたものを履いて登校したんです。そうすると、まずは生活指導の先生に怒られて、友だちには「ちょっとマリン、おかしいって」と言われたりしましたね。

――そんななか、今やSNSのフォロワーが5万人にもなり、共感してくれる人もたくさんいるんですよね。

そうなんです。なので、SNSを始めてよかったなと思います。

――フォロワーさんはどういった世代の方が多いんですか?

世代はすごく幅広くて、若い世代の方はもちろん、60代の方もたくさんいらっしゃるんです。

――阪田さんは“ネオ”昭和というのを提唱していますが、これにはどんな意味が込められているんでしょうか?

“ネオ”というのは「新しい」という意味なんですが、平成生まれの私たちにとっては昭和が新しいものに見えるんです。レコードに針を落とすと音が鳴ったり、伝言板を通じてメッセージを送り合ったりと、すべてが経験したことのないものばかりなので、“ネオ=新しい”昭和と呼んでいるんです。

――阪田さんはラジオもお好きなんですよね?

高校3年間、セルフサービスのガソリンスタンドでアルバイトをしていたんですが、そこではいつもラジオが流れていたんです。最初は興味なんてなかったんですが、聴いているうちに頭の中でいろんな想像が広がって、「おもしろいな」と思うようになったんです。それをきっかけに「私もしゃべる側になりたいな」と思って、大学受験をする時に放送学科を選び、将来はラジオパーソナリティーを目指しています。

――現在の昭和レトロブームについて、どう考えていますか?

確かに、テレビなどでも「レトロ特集」が組まれているように、今まさにブームなんだと思うんです。でもブームというのは過ぎ去ってしまうものなので、そうなってしまわないように、私がSNSで昭和の魅力を発信し続けたいなと思っています。

阪田マリンさんと黒電話

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 これからもSNSで“ネオ”昭和の魅力を発信することで、大好きな昭和カルチャーを自身の生活に取り入れるだけでなく、そのブームが一過性のものとして終わってしまわないよう、その魅力をより多くの人たちに広めていきたいと熱く語ってくれた。