神戸・摩耶山上へのアクセスライン「まやビューライン(ケーブルカーとロープウエー)」と、JR灘駅や阪急王子公園駅、阪神岩屋駅など、ふもとの神戸市灘区とをつなぐ「まやビューライン坂バス」(坂バス)。そのコミュニティバスが、期間限定の「イルミネーションバス」の運行を開始した。

(水道筋・灘中央筋商店街を通る坂バス。撮影=水野さちえ)
水道筋・灘中央筋商店街を通る坂バス(撮影:水野さちえ)

 王子動物園(神戸市灘区)のパンダ「タンタン」に見立てた大きなぬいぐるみが乗車し、摩耶山への行楽客や、高低差が大きい神戸の“南北移動”で日常使いする地元住民に親しまれている、坂バス。今回の「イルミネーションバス」は、車体の外側が電飾されたのではない。なんと“車内”でイルミネーションが楽しめるというものだ。どういうことか。そもそもなぜ、バスでイルミネーションなのか?

■クラウドファンディングの資金を還元

「クラウドファンディングのリターンとして、イルミネーションを考案しました」と話すのは、「摩耶山再生の会」事務局長の慈憲一さん。2021年4月、コロナ禍による乗客減が続く坂バスを応援しようと、摩耶山再生の会と灘区役所がクラウドファンディングを立ち上げた。そこで集まった資金の使いみちについて、皆でアイデアを出し合ったという。

「神戸に路面電車(1971年まで運営された神戸市電)が走っていたころ、祭りなどの特別な日には、市電が花や電飾で彩られた」という地元の仲間との立ち話から、慈さんが着想したのがイルミネーションだ。そして、乗客に楽しんでもらうには、車外よりも車内を電飾したほうがよいのではと話が進んだ。

(1967年、灘区を走る神戸市電「花電車」。『NADA90 灘区政90周年記念写真集』より)
1967年、灘区を走る神戸市電「花電車」 (『NADA90 灘区政90周年記念写真集』より)

■走行ルートにちなんだイルミネーション

 電飾製作を手がけたのは、灘中央市場内に工作室を構える「C-SPACE Nada」のエンジニアだ。LEDテープ32本を坂バスの天井に設置し、「タンタン」「龍神」「ロープウエー」といった、坂バスの運行ルートにちなんだ電飾プログラムを設計した。

 製作期間は約1か月。坂バスを運営するバス会社、みなと観光バス株式会社の協力のもと、運転の妨げにならない色使いやプログラミングなど、安全運行とデザイン性を両立させるための試作やテストが重ねられた。

 イルミネーション「タンタン」は、タンタンが坂バスの天井をコロコロと回転しながら往復するという愛らしいもの。どこか、懐かしさも感じさせる色合いだ。

(テスト時のイルミネーション「タンタン」。提供=C-SPACE Nada)
テスト時のイルミネーション「タンタン」(提供:C-SPACE Nada)

■“走るイルミ”を楽しんで

 イルミネーションバスの運行は2022年1月末まで。2台体制で運行している坂バスのうちの1台にイルミネーションが搭載されており、毎日午後5時以降に点灯される。

「(神戸)ルミナリエの時期に合わせて、12月3日から運行を開始しました。残念ながらルミナリエは今年も実施が見送られましたが、坂バスの“走るイルミ”を楽しんでもらえれば。行き先を決めずに、乗っているだけでも面白いですよ」と慈さん。JR灘駅から1周30分ほどの、小さなバスの旅だ。

「摩耶ケーブル下」で降りて、まやビューライン(※冬ダイヤで運行中)に乗り継げば、山上の掬星台(きくせいだい)から、日本三大夜景の名にふさわしい眺めや星空も見渡せる。坂バスに乗って、さまざまな冬の輝きに触れてみよう。

坂バス(中央)とイルミネーション「タンタン」(左)、「龍神」(右) (撮影:monte702吉田麻紀さん)

(取材・文=水野さちえ)