神戸育ちの人と幼少期の話をしていると、高確率で登場するのが「とくれんゼリー」の話題です。

 とくれんゼリーとは、1974年頃から兵庫・神戸市の学校給食に登場したオレンジゼリーのこと。正式名称を「プデナーオレンジ80」といい、製造をおこなっていた「徳島県加工農業協同組合連合会」が作るゼリーということで「とくれんゼリー」と呼ばれるようになりました。

「とくれんゼリー」こと「プデナーオレンジ80」(提供=株式会社吉兵衛)

 このとくれんゼリー、全国の給食の献立にも登場するのですが、なぜかずば抜けて神戸市民から愛されているのです。そこで、現在製造をおこなっている「浅井缶詰株式会社」(徳島県阿南市)の取締役社長・田中明德さんに話を聞き、とくれんゼリーが愛される秘密に迫りました。

 とくれんゼリーは、連合会が解散して以降、約20年前に浅井缶詰が製造を引き継ぎました。パッケージやゼリーは、プラスチックカップが紙カップに変わったことや保存情報などを記載しているシールが変更になった以外は、その当時のままなんだとか。

 もちろんとくれんゼリー・誕生の地である徳島県でも食べられていたそうですが、神戸ほどの人気はないそう。全国の給食に登場したにもかかわらず、なぜ神戸市民からの支持率が特に高いのでしょうか。

ゼリーは紙製スプーンで食べるのが思い出のスタイル(提供=株式会社吉兵衛)

 そんな疑問を田中さんにぶつけてみると、明確な理由は分からないものの「果汁80%という、ゼリーには珍しい濃厚さが好評なのかもしれません。また、なぜか神戸市だけ給食でとくれんゼリーを使用する頻度が高かったので、自然と生活になじんでいったのではないか」とのこと。人気の秘訣については依然として謎が多いものの「神戸から東京に引っ越した人が、わざわざ浅井缶詰に問い合わせをする」「ラーメン屋の店主が、小さい頃の味を懐かしみ店でゼリーを取り扱い始める」など、とにかく熱烈ファンが多いことが分かるエピソードがたくさん出てきました。

 そこまで愛されるとくれんゼリーを、一度食べてみたいと思う人も多いはず。そこで、とくれんゼリーを取り扱う飲食店にも話を聞いてみることに。三宮に本店があるかつ丼店「吉兵衛(よしべい)」(神戸市中央区)では、2017年よりデザートメニューとしてゼリーを導入し始めました。

神戸に根付いた吉兵衛だからこそ、デザートに「とくれんゼリー」を採用した(提供=株式会社吉兵衛)

「なつかしい思い出の味で活力を養ってほしい」という思いからゼリーの提供を始めただけあり、吉兵衛の、ゼリーにかけるこだわりも並々ならぬものがあります。たとえば、半解凍状態のゼリーを少しずつ溶かして食感を楽しむ「半シャリ」の再現もそのひとつ。ゼリーが冷凍状態で小学校に搬入されるため、半解凍の状態で午後の給食に出ていたのですが、吉兵衛ではこの半シャリを再現するため、ゼリーに思い入れのあるスタッフを集めて試行錯誤を重ねたそうです。

吉兵衛ではとくれんゼリーをまとめ買いしていく方もいるそう(提供=株式会社吉兵衛)

「発売当初は多くのお客さまより歓喜のお言葉をいただきました」(『吉兵衛』広報担当の宮西さん)現在でもSNSで取り上げると、「欠席の子の余り分を、よぉじゃんけん大会で取り合ったなぁ」などと盛り上がり、思い出話に花が咲くようです。

 ちなみに吉兵衛では、尼崎や三田、大阪府などの店舗でもとくれんゼリーを取り扱っています。もし「神戸っ子」と話す機会があったら、話のタネとしてとくれんゼリーの話題をふってみては?

吉兵衛の東梅田店なら、大阪でとくれんゼリーを食べられます(提供=株式会社吉兵衛)

(取材・文=つちだ四郎)