芦屋に本店を置くベーカリーをはじめ大阪梅田の商業施設のロゴマーク、アパレル企業や国際的なイベントのポスターなど……。日本を代表するアート・ディレクター、グラフィックデザイナーの松井桂三氏の作品を集めた企画展「松井桂三展|化学反応実験」が、宝塚市立文化芸術センターで開かれている。2022年5月14日(日)まで。

 会場には、子どもから大人まで誰もが一度は目にしたことのあるロゴマークや、ポスター、ポップアップ作品などおよそ200点が並ぶ。1946年広島県で生まれた松井氏は、米・アップル社「Mac」のパッケージデザインのシステム構築や、プレタポルテ「コシノヒロコ」のブランディングなど様々な企業・ブランドのアートディレクションを手掛けている。宝塚市立文化芸術センターのロゴマークも松井氏の作品だ。

 会場に入ってまず目に入ってくるのは「惨劇への発令」とタイトルがつけられたポスター。アメリカ国立公文書館所蔵「原爆投下命令書」をモチーフとしている。サインひとつで多くの人の命を奪ってしまうという、被爆地である広島で生まれ育った松井氏だからこその平和への思いが込められている。

 モスクワ国際グラフィックビエンナーレ(ロシア)でゴールデン・ビー賞を受賞した「【祈り】No more Hiroshimaを願って」は、デジタルに移行する時代の作品で、1本1本の線が手で描かれ、シルクスクリーン11刷で作られている。キノコのように見えるのは「原爆のキノコ雲」とされ、タイトルを知ることで、さらに見る者の胸に刺さる。広島で生まれ育った松井氏だからこそ平和への思いは強い。

 松井氏の作品は、日本はもちろんのこと海外で高い評価を受けており、国際的なイベントのポスターなどが並ぶ。これほどの規模での個展は日本では初めてという。作品からは制作された当時の社会状況や時代の流れも伝わってくる。

 宝塚市立文化芸術センターの森田明子キュレーターは、「作品からは言葉を超えて伝わってくるものがある。モノの見方はひとつじゃない。人によって違う。その大切さ、面白さを伝えてくれている。未来を担う子どもたちへのメッセージも込められている」と話す。

 化学反応実験というタイトルが示す通り、見る側が何を感じ取るのか。それは会場で「実験」に参加しないとわからない。