ここ数年、「スマートウォッチ」を着けている人を目にする機会が増えました。腕時計業界においては「革命児」ともいえるスマートウォッチは、どのようにして生まれ、今後どのように変遷するのでしょうか。登録者数が5万7千人を超える「腕時計YouTuber」であるRYさんが、『やさしい腕時計』(ラジオ関西Podcast)で解説しました。

◆スマートウォッチはどのようにして生まれた? 日本の「セイコー」が多大な貢献

 まず第一に、「スマートウォッチ」の定義はあいまいです。デジタル表示の腕時計をそうとするならば、世界初は1972年にハミルトンが発売した「パルサー」です。しかし、時刻がわかるだけでなく、「腕につける情報機器」をそうとするならば、歴史を大きく変えたのは国産ブランド「セイコー」でしょう。具体的なモデルで見てみましょう。

「パルサー」発売の1年後、セイコーは世界で初めて6桁を表示できるデジタルウォッチを発売します(パルサーは4桁、つまり「時・分まで」)。その後、1982年には世界初のテレビ付きウォッチを発売。1.2インチの液晶モニターで、国内で放送される全てのテレビ番組を見ることができ、FMラジオまで聞くことができました。

 そしてなにより、翌1984年に発売された、世界初の腕時計型コンピュータ「腕コン」は、それまでの腕時計の概念をガラリと変えました。腕時計とキーボードを繋いで使用するもので、最大2000字を記憶でき、電話帳や住所録として使えたほか、1か月先までのスケジュールを記憶し、スケジュールをアラーム音で知らせてくれていました。現代のリマインダー機能です。

 ほかにも、録音と再生の機能がついた「ボイスノート」(1983年)や、脈拍を計測できる「パルスグラフ」(1995年)など、「世界初」は枚挙にいとまがありません。

 ここまで列挙したどのモデルを「世界初のスマートウォッチ」とするかは難しいですが、いずれもが現代におけるスマートウォッチの原型になっているのは間違いないでしょう。

◆2015年のApple Watch登場でスマートウォッチ市場は本格化。ヒットした要因は?

 スマートウォッチ市場が本格化したのは、米Apple社による「Apple Watch(アップルウォッチ)」の発売(2015年)です。iPhoneとBluetoothで連携できるという、これまでとは全く違う仕組みで、瞬く間に大ヒットします。

 それまでの、携帯電話メーカーによる試作品的な「腕時計型電話」や、パソコンと連携した「エレクトロニクスデバイス」とは異なり、手持ちの「スマホの子機」ともいえるシンプルさが、大きくヒットした大きな要因だと考えられます。

 Android端末に目を向けると、2012年には手持ちのスマートフォンの通知を示す「腕時計型デバイス」は存在しましたが、それほど大きなインパクトはありませんでした。それにも関わらず、アップルウォッチがこれだけヒットした理由は「ファッション性に優れたデザイン」であったことも忘れてはならないでしょう。

 そして、2019年。世界全体の時計の出荷数量で、アップルウォッチは「世界一」にまで昇りつめました。このことは“腕時計離れ”が叫ばれる若者たちの手首に改めて時計が巻かれるきっかけとなったと言えるかもしれません。

 実際に、2021年のスイス時計の輸出高はコロナ以前である2019年を輸出金額高で2.7%上回りました。また、輸出の内訳を見ても、数量こそ2019年を下回っていますが、金額が上がっている事から時計1個あたりの単価がアップしている、つまり高級化が進んでいることがわかります。

 このことは、アップルウォッチと機械式時計は「別物」と多くのユーザーが認識し、双方の時計を楽しんでいるという見方もできます。右手にアップルウォッチ、左手に機械式腕時計、という使い方は何ら不思議ではありませんし、RYさんも実際にそのような使い方をしていたそうです。

◆高級時計ブランドもスマートウォッチ市場に参戦中!

 スマートウォッチ市場には、腕時計ブランドによるモデルをいくつか見ることができます。代表的なモデルとしては、ウブロの「ビッグ・バン e」や、タグ・ホイヤーの「コネクテッドウォッチ」などです。

 そのほか、万年筆でおなじみの「モンブラン」など数社から同じようなスマートウォッチが発売されていますが、各ブランドの趣旨はあくまで「機械式時計へのきっかけ」なのが実情です。スマートウォッチを今後の自社製品の主力として考えているブランドはほとんどないのではないでしょうか。

 先述の通り、多くの時計愛好家たちはスマートウォッチと機械式時計は「別物」であり、スマートウォッチユーザーが次の腕時計として高級時計を検討している可能性も十分にあります。

 例えば今後、「ロレックス」や、「パテック・フィリップ」をはじめとする世界三大ブランドがスマートウォッチ市場に参入することはあるのでしょうか。RYさんは「恐らくしないだろうし、してほしくない」と考えを明かしますが、あらゆる可能性を秘めています。今後のスマートウォッチ市場にも注目が集まります。

(ラジオ関西Podcast『やさしい腕時計』 #7『ロレックスをも超えた―あなたは「スマートウォッチ」をどう考える?』より)