「無人島に1つだけ持って行くなら?」という、会話における永遠のテーマがあります。それを、腕時計で考えてみましょう。求められる要素は、「サバイバル生活の中で活躍する」ことなのか、はたまた、「無事に無人島に流れ着くこと」なのか……。登録者数が6万人を超える「腕時計YouTuber」であり、本業は船長で、常に危険と隣り合わせというRYさんが、『やさしい腕時計』(ラジオ関西Podcast)で解説しました。

◆「助けを呼べる」腕時計がある?

 RYさんがまず挙げるのが、スイスのブランド・ブライトリングの「エマージェンシー」です。この腕時計の最大の特徴は、超小型の発信機を装備していること。アンテナを引き出すことで、周波数121.5MHz(メガヘルツ)の国際航空遭難信号を48時間にわたって出し続けられるのです。この周波数の信号は、飛行機が墜落したり、不時着してしまった場合、捜索・救助隊を誘導するための万国共通のもの。これほどまでに頼りになる機能はありませんね。低地や穏やかな海の上であれば、90マイル=約160キロの範囲に信号が届きます。

 腕時計本体の防水性能は3気圧・30メートルにとどまっており、RYさんはこの点を懸念材料に挙げます。ただし、時計と発信機は互いに独立しているため、万が一、時計が壊れてしまっても、発信機が生きていれば助けを呼べます。当然ながら、飛行機や船には、緊急時に信号を出す仕組みが必ず備わっていますが、この時計は、それらを補完するものです。

「エマージェンシー」は、航空業界のプロフェッショナルに向けたサバイバル計器であり、誰でも購入できるわけではありません。航空法で定められた航空従事者かつ、電波法で定められた無線従事者に限られていて、購入した後も様々な手続きや点検が求められます。そうした意味では、「現実的な時計」とは言えないかもしれませんね。

◆文字盤だけで方角がわかる?

 アナログ時計を見につけていれば、たとえ方角を見失っても、太陽があれば方角を知ることができることはご存じでしょうか。昼の12時に太陽が真南の一番高い位置にある時を「南中」といい、これを利用するやり方です。

 やり方はまず、時計を水平に保ちながら、短い方の「時針」を太陽の方向に向けます。その時、時針と文字盤の12時位置の中間の角度が南です。午前は文字板の左側、午後は文字板の右側が南を向きます。ただし、これは北半球の場合で、南半球で同じことをすれば、すべて逆になります。

 24時間で一周する、「24時針(GMT針)」が付いた腕時計の場合はもっと簡単です。GMT針を太陽に向けて、「文字盤の12時」の方角が南です(北半球の場合)。いずれも、正確な方角を知るのは難しいので、あくまで目安にはなりますが、知っておくと便利な方法です。24時間表示が付いた有名な時計には、ロレックスGMTマスター(現行品ではGMTマスター2)があります。もともとは「別の地点の現地時間を示す」という役割を持つ「24時針」ですが、それ以外の役割もあるのです。

◆「とにかくタフ!」を求めるならば…?

 とにかく「壊れない」ということに重きを置くならば、ベストな選択と言える腕時計のひとつが「G-SHOCK」でしょう。「落としても壊れない丈夫な時計」をコンセプトに、1983年、日本のカシオが世に送り出しました。初代のモデルから、10気圧防水、10年電池がもつ、10メートルの高さからの落下に耐える、という「トリプル10」を実現していて、とにかくタフ。これ1本あればあらゆるシーンで重宝します。何もない無人島であれば、最強の腕時計と感じる人も多いはずです。

 いずれにせよ、「意志を持って無人島へ行く」のか、「遭難して無人島へたどり着いてしまった」のかで、選び方は大きく変わりますね。

◆「ありえない」状況を考えることは無意味ではない?

 いかがでしたでしょうか。「無人島へ行く」ということがそもそも、一般的にあり得ない状況です。そこに持っていく腕時計を考えるのはもっと現実的ではないかもしれません。しかし、こうした常識に囚われない発想を持つことは、腕時計の進化に必要なエッセンスでもあるでしょう。

 例えば、ロレックスには「洞窟探検家」向けの特殊時計「エクスプローラー2」が存在します。これは昼も夜も常に太陽光が入らない鍾乳洞での使用を想定した腕時計として有名です。また、12,800フィート=3,900メートルまで潜ることのできる、同社の「ディープシー」を着けている人を見て、「そんなに深くまで潜らないでしょ」というのは野暮というものです。

 こうした、「奇想天外」ともいえる発想こそ、新しい製品が世に誕生するきっかけになります。皆さんも「無人島に持って行く腕時計」を想像してみると、案外楽しいかもしれませんよ。

(ラジオ関西Podcast『やさしい腕時計』 #8『ロレックス、ブライトリング、ジン…無人島に1本だけ腕時計を持っていくなら、どうする?』より)