「クロワッサンたい焼き」や、アイスの入った「冷やしたい焼き」など、最近はたい焼きにも様々な種類がありますが、古くから親しまれるたい焼きに、本物の魚と同様「天然」と「養殖」の2種類があることはご存知でしょうか。そこにどういった違いがあるのでしょう? 全国に40店舗以上を出店し、自店舗の品を「天然モノ」として販売するたい焼き専門店「日本一たい焼き(福岡市)」に聞きました。

 日本一たい焼きは、たい焼きに「養殖」と「天然」があることを強調しています。同店によると、「天然モノと養殖モノの違いは、たい焼きを作る『釜』にあります」とのこと。「養殖モノ」とは、生地を焼き型に流し入れて焼き、片側にあんこをのせて両側を合わせ、一度に6匹(個)〜10匹ほど焼き上げるものを指します。これは、たい焼きが誕生してから人気が高まっていく過程で、大量に販売するために考えられたものだそうです。

 一方、一度に1匹〜2匹までしか焼けない釜で作られたたい焼きを「天然モノ」、または「一丁焼き」と呼びます。

「養殖モノは一度に大量に作ることができ、電気で作られることがほとんどです。時間を設定して焼くこともできるので、ちょうど良い焼き加減で、誰でもうまく作ることができます」(日本一たい焼き)

 ただ「天然モノ」は、「一度に2匹ずつしか焼けないため焼き上がるまでの間が長くなってしまいます。また、火で焼き上げるのですが、火加減や時間の調整が難しく、誰でも上手に作り上げられるわけではありません」とのことでした。

 手間や時間、熟練の技が必要となりコストもかかる「天然モノ」のたい焼きですが、その分、養殖にはない皮のサクサク感を楽しむことができるそうです。

 じつは、たい焼きの「天然」と「養殖」という分類は、日本一たい焼きだけが行っているというわけではありません。「天然たい焼き」をうたうたい焼き店も多く、たい焼き好きの人にとっては広く浸透した分類の仕方だそうです。

 では、「天然」と「養殖」は誰がいつから言い始めたのでしょうか?

「たいやき ともえ庵」(東京都杉並区、以下、ともえ庵)によると、「天然モノ」はかなり新しい表現であり、2002年に発刊された本『たい焼の魚拓』の中で、著者の宮嶋康彦さんが、たい焼きを分類するのに使ったのが最初だと言われているそうです。

 写真家の宮島さん。たい焼きが大好きで、当時は“絶滅”寸前だったという「天然モノ」のたい焼きを求めて日本各地を巡り、たい焼きの魚拓を集めた『たい焼きの魚拓』を出版しました。ともえ庵の「全国一丁焼きのたい焼き店調査」によると、現在は一丁焼きのたい焼きを提供するチェーン店が増えたことで、天然モノのたい焼き店は増えてきている、とのことです。

 ちなみに、たい焼き自体はどのように誕生したのでしょうか? ともえ庵によると、諸説あるそうですが、江戸時代に発祥したらしい「文字焼(もんじやき)」にルーツを持つとのこと。

「文字焼」とは、熱した鉄板または銅版の上に、小麦粉に砂糖を混ぜて水で溶いたものを流して文字や絵の形に焼いたもので、鯛や亀、宝物など縁起の良い形が人気だったとされています。その文字焼きに、やがて餡を入れるようになりました。そして、鯛の金型ができるなど高度に発展し、現在のたい焼きにつながっていったのだそうです。

 天然にも養殖にもそれぞれの良さがある「たい焼き」。購入される際はどちらのたい焼きなのか、気にしてみてください。

(取材・文=宮田智也 / 放送作家)