厚生労働省の専門部会と薬事分科会は22日、合同会合を開き、塩野義製薬(本社・大阪市中央区)が開発中の新型コロナウイルス感染症の経口薬「ゾコーバ錠」(重症化リスクのない、軽症や中等症の患者向けの飲み薬)についての承認可否を審議し、賛成多数により製造・販売の緊急承認を了承した。 抗ウイルス薬としては国産初の飲み薬で、2022年5月に創設した緊急承認制度の最初の適用となる。

 政府は100万人分の「ゾコーバ錠」を購入することで塩野義製薬と合意しており、12月初旬から医療現場で使用できるよう購入し、供給を始める。

 対象は12歳以上の軽症・中等症患者で、重症化リスクがなくても投与できる。しかし妊婦や、妊娠している可能性のある女性には投与できず、一部の治療薬とは併用できない。

 塩野義は2021年7月、ゾコーバ錠の臨床試験を始め、2022年2月に厚労省に承認申請していた。パンデミック(爆発的な感染症流行)やバイオテロの発生などの緊急時に対応するため、2022年5月に成立した改正医薬品医療機器法(薬機法)で創設した「緊急承認制度」の適用を目指していたが、承認が2度見送られていた。今回はコロナ感染拡大「第8波」が急激に押し寄せる中、 3度目の審議となった。

 緊急承認は、感染症などによる健康被害の拡大を防ぐために急きょ必要な薬や医療機器が対象で、代替手段がないことが要件で、安全性が十分確認され、有効性(効果)を推定できるデータが集まれば使用を認めるというもの。ただし緊急承認されても、約1年の期限内に効果を確認できなければ、承認は取り消される。

 7月20日に開かれた厚生労働省の専門家会議で、 アメリカ製(メルク社・ファイザー社)の飲み薬2種類がすでに実用化されていることもあり、「(当時)提出されたデータからは、有効性を推定できない」として承認が見送られ、継続審議となっていた。

 塩野義の中間段階の臨床試験(治験)では、主な評価項目のうち、ウイルス量を減らす効果は確認できたものの、頭痛や吐き気などを含む新型コロナの12の症状を総合的に改善する効果が認められなかった。
そして9月、塩野義は最終段階の治験で12の症状のうち、 新型コロナの変異種・オミクロン株に特徴的な▼鼻水(鼻づまり)や、▼喉の痛み、▼せき、▼発熱、▼倦怠感といった「5つの症状」が消失する時間が、約8日から7日と、24時間短縮される効果を確認した。治験は2022年2月〜7月、12歳から70歳未満の患者1821人を対象に実施した。
 今回、懸念されたのは、この「5つの症状」が、あらかじめ主要な評価項目として設定されたものではなく、最終治験開始後に新たに項目を変更した後付けの解析に過ぎず、信頼度が下がるという点だった。

■不安定な国際情勢、安定供給の観点からも意味が

 審議ではこれまでにも出ていた「コロナ感染拡大初期と異なり、代替薬がすでにある」として反対する意見もあったが、最終治験で、5つの症状が消えるまでの時間が24時間短縮されたことや、ウイルス量が減少したことも報告され、有効性は推定されるとの意見が多くを占めた。さらに「国際情勢が不安定な中、国産の薬があることは安心材料になる」との意見もあった。

■感染症対策専門の医薬品メーカーとして

 塩野義製薬はこれまでにも、インフルエンザ治療薬や抗HIV薬の開発を手がけた、感染症対策の専門メーカー。手代木功会長兼社長は「新しい治療選択肢を、まず日本に、そして必要とする多くの国に提供できるよう取り組んでいく」とコメントした。