2月14日に向け、百貨店などではすでにバレンタインの催事が盛り上がりを見せています。女性から男性へ……という時代はとっくの昔に過ぎ去り、「自分へのご褒美」としてチョコを買うのが主流となっている昨今のバレンタイン。催事場には一粒1000円を超える宝石のような見た目の高級チョコレートもちらほら。

 とはいえ、チョコレートと聞いてパッと思い浮かべるのは「板チョコ」ではないでしょうか? 溝が施された板チョコのキャッチーなデザイン、筆者は“割りやすさ”や“分けやすさ”の目的があると思っていました。ですがあの溝、そのために付けられているわけではないというのです。ではどういった理由で溝がつけられているのでしょうか?『明治ミルクチョコレート』などを販売する、明治ホールディングスの広報に聞いてみました。

 板チョコの溝部分に沿って割ろうとしても、斜めに割れたりなどうまくいかなかった経験がありませんか? 広報によると「もともと割るためのものではありません」とのこと。その上で「溝の本来の理由は2つ」と言います。

 ひとつめの理由は「チョコレートを早く冷やし、均一に固めるため」だそう。

「溝を入れることで、チョコレートと型の接する表面積が広くなり冷えやすくなります。また均一に冷やすことで口溶けを良くすることができるのです」(明治ホールディングス広報)

 そして、「チョコレートを型から外しやすくするため」というのが2つめの理由。

「チョコレートは冷やすと体積が減り縮みますが、溝を入れることで取り出しやすくなります」(明治ホールディングス広報)

 要するに、板チョコの溝はチョコレートの味や生産効率のために作られたのであって、決して「割るため」では無いことが明らかになりました。

 また、チョコレートの味や香りのために計算して形状や柄、溝などにこだわることもあります。明治の主力製品である『明治 ザ・チョコレート』シリーズがまさにそうで、カカオの産地ごとの味や香りを楽しませるため重さや薄さにこだわり、さらに表面にギザギザ加工をすることで口に含んだときの表面積を大きくするという工夫がこらされています。

「『ザ・チョコレート』シリーズは、口の中に入れたとき、体温が伝わりやすく香りをより立たせるために緻密な細工がなされています」(明治ホールディングス広報)

「溝」の形状ひとつとっても“おいしく味わうため”の企業努力がなされているのです。

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 幸せホルモン「セロトニン」の分泌を活発化させてくれるというチョコレート。取材の結果“きれいに割るため”のものではなかったチョコレートの溝ですが、やはり幸せはみんなで共有した方が素敵ですよね!

(取材・文=宮田智也 / 放送作家)