線と色彩によって光を表現し、抽象の中に生命のエネルギーを描き出したパウル・クレーの画業の軌跡を、同時代に活躍した芸術家の作品と共に紹介する「パウル・クレー展――創造をめぐる星座」が、兵庫県立美術館で開催されている。2025年5月25日(日)まで。
パウル・クレーは、独特な色彩表現で知られる。人生の根源的な悲劇性と向き合いながら、線と色彩によって光を呼び起こし、抽象のなかに生命のエネルギーを描き出した。その背景には多くの芸術家たちとの交流があった。彼らとの出会い、別れ、そして社会の出来事は、クレーの考え方や作品に影響を与えたとされる。今展では、クレーと芸術家たち、同時代の美術動向との関わりを、作品や資料から解き明かし、クレーの生涯に渡る創造の軌跡をたどる。今展を企画した愛知県美術館の黒田和士学芸員は「その関わりを見ることでクレーの作品をより深く見ることができるのではないか」と話す。
1879年、スイスのベルン近郊で生まれたパウル・クレーは、1898年、19歳の時に画家になる決意をし、ドイツ・ミュンヘンに出る。
アーティストとしてのデビュー作品ともいえる『インヴェンション』シリーズ。10点のうち3点が展示されている。複雑に線が交錯するモノクロの銅版画で、多くの人が持つクレーのイメージとはかけ離れている。フランス・パリに旅行し、「印象派を見て刺激を受けて作った作品」という『リリー』は、色彩を抑えつつ光を表現している。その後、チュニジアを訪れ色彩に目覚める。
戦争もクレーに大きな影響を与えた。第一次世界大戦で友人を失ったクレーは、戦争への批判的な態度を強める。ひとつの作品の中に2つの画面。その間に微妙な空間……これは1枚の大きな絵を切断し、下に描かれていたものを上部に、上のパーツを下部に配置した。自身の作品を破壊して再構築する暴力的な手法で、戦争へのメッセージを込めたとされる。
1920年に設立されたバウハウスで教壇に立つなど充実した時間を送っていたが、ナチス・ドイツに「退廃芸術」として目をつけられ、スイスへ亡命する。1935年以降は身体の不調・苦痛を表現するような作品も描いた。
『無題(最後の静物画)』は、1940年に亡くなった際、アトリエに残されていた作品のひとつで、真っ黒な背景に、死を連想させるようなモチーフが描かれている。片手をあげている彫像の先は切断され、その下には散った花々。「絵の中の絵」として描かれた線描画の天使も。その色彩は鮮やかで、死の直前まで熱意をもって作品に取り組んでいたことがうかがえる。
クレー展は、日本でこれまで何度も開催されている。同館では10年ぶり。「今回は若い研究者(黒田学芸員)が企画したもの。次の世代に開かれていく、これまでとは違うクレー展になる」と、同館の林洋子館長は話す。
■パウル・クレー展――創造をめぐる星座
2025年3月29日(土)〜5月25日(日)
兵庫県立美術館 (神戸市中央区脇浜海岸通1−1−1 HAT神戸内)
10:00〜18:00 入館は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日 ただし5月5日(月・祝)は開館、5月7日(水)は休館


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