明治以降、戦前までに造られた群馬県内の住宅、公共施設といった「近代和風建築」が老朽化や維持の難しさから、姿を消しつつある。文化財や史跡として保護されていない建築物が多く、耐震改修費用が膨大になるとして、7月までに解体された旧多野会館(藤岡市)は象徴的なケースだ。 保護されるのは群馬県の近代史を語る上で欠かせない臨江閣(前橋市)や中島知久平邸(太田市)といった一部の著名な建築物に限られている。生活に密着した身近な事務所や商家、養蚕家屋などは文化財としての社会的認知が低いため、手が及ばない実情がある。 タイルで覆われた重厚感のある建物がショベルカーにあっけなく崩されていく—。「今は分からないかもしれないが、記憶の片隅に残ってくれれば」。6月上旬に旧多野会館(藤岡市藤岡)の解体工事を園児とともに見学した藤岡幼稚園の女性職員は、神妙な面持ちで話した。