恋人から嫉妬や束縛をされると「私のこと、そんなに好きなんだ」と感じ、なんとなく嬉しくなることも。しかし、度が過ぎる愛を向けられると息苦しくなり、別れが頭をよぎります。

「あの頃の私は、束縛されることが愛だと思っていたんです。彼と過ごす中で、縛られることが普通になっていきました」

 そう語る早瀬みどりさん(仮名・30歳)は長い黒髪が似合う、上品な女性です。彼女は年下彼氏からの激しい束縛を経験し、人を愛すことや愛されることが怖くなってしまいました。

◆元カレの浮気の傷を癒すため、マッチングアプリを開始
 みどりさんは5年交際し、結婚まで考えていた彼氏の浮気が発覚したという悲しい恋を経験してきました。

「私のほうが浮気相手でした。問い詰めたら向こうの女と結婚を考えていると言われて……。月並みな表現ですが、本当に目の前が真っ暗になりました」

 心の傷はなかなか癒えず、しばらくは家に引きこもる日々。しかし、友人が「恋の傷は恋でしか癒せないよ」と、半ば強引にマッチングアプリに登録させてくれたことにより、少しずつ前を向けるようになっていきました。

「最初は暇つぶし程度の感覚でしたが、私と話したいと思ってくれる人がいることが嬉しくて。もう一度、恋をしてみようかなと考えられるようになりました」

 元カレは年上男性だったため、みどりさんは「今度は年下の男性と付き合ってみよう」と思い、20代の男性とも積極的にマッチング。その中で気になったのが、5つ年下の男性でした。

◆マッチングアプリで出会った子犬系男子にキュン
 好きなアニメや音楽が同じだったことから2人の距離は縮まっていき、何度かデートをするようになっていきます。

「彼は社交的でいつもニコニコしているタイプ。内気な私には眩しく見えました。あと、褒めると分かりやすく喜んでくれて、かわいいなと思いましたね」

 4回目のデートでみどりさんは彼から告白され、2人は晴れて恋人になりました。

「付き合ってからは彼をかわいいと思う瞬間がもっと増えました。愛情表現がストレートだったり、ふたりの時には甘えてきてくれたりと、元カレにはない子犬感にキュンキュンしました」

◆交友関係を縛られ、好きな服が着られない
 みどりがいなくなったら、僕は生きていけない――。付き合って3ヶ月ほど経つと、彼はよくそんな言葉を口にするようになりました。

「最初は、すごく嬉しかった。そんなに私のことを好きでいてくれるんだと思えたから。元カレには裏切られたので、深く愛されているという事実が沁みました」

 しかし、彼の愛情は思わぬ方向へ向かっていきます。ある日、地元のショッピングモールでデートをしていたみどりさんは偶然、大学の同級生だった男友達に遭遇。数年ぶりの再会だったため、彼が隣にいることを忘れ、つい盛り上がってしまいました。

 すると、男友達と解散した後、彼は嫉妬心をあらわにし、今後のみどりさんの服装を制限してきたのです。

「その日、私は膝丈のスカートを履いていたのですが、『あの人、脚をめっちゃ見てた。こういうことがあると心配だから、これからはスカート禁止』と言われました」

 そして、別れ際には「もし、今日会った人から連絡が来ても返さないで」と念押しされ、次のデート時には会うなり「スマホ見せて?」と抜き打ちチェック。

「電話帳まで見られました。仕事先の人なのに男の人の名前を見つけると、『この人は誰?どういう関係?連絡先、消せないの?』と尋問されてキツかったです」

◆感覚が麻痺して「別れ」が選択肢によぎらなくなった
 みどりさんに課された制限ははたから見れば、どれも理不尽なもの。しかし、いつも泣きそうな顔をしながら「ごめんね。みどりが大切で誰にも取られたくないから、束縛しちゃう」や「僕がいない間に他の人とどうにかなったら耐えられないから防ぎたい」と口にする彼を目にし続けるうちに、感覚は麻痺。別れという選択肢が頭によぎらなくなりました。

「デート時の服装はもちろん、ちょっとコンビニに行く時の洋服も彼に相談して決めるようになりました。基本的にスカートは禁止でしたし、夏は肌が見えないようにしてと言われたので長袖を着ていました」

 そんな風に“2人だけの世界”を築き続けていたある日、目が覚める出来事が。それは、久しぶりに帰省した妹さんが、みどりさん宅へやってきた時のこと。「来年結婚するんだ」と報告してくれた妹さんと恋愛話をしていた時、彼から「妹ちゃんと会うって言ったけど、まだ会ってるの?」と彼からLINEが届きました。

「もう少し話す」とみどりさんが返信すると、彼から「本当に家にいるのか心配だから、家にいる証拠として時計を写して送って」と言われたといいます。

◆妹からの一言で彼との別れを決意
 そこで時計を撮影すると、妹さんから「お姉ちゃん、どうしたの?」と声をかけられたため、みどりさんは彼のことや自分たちの関係性を詳しく話しました。すると、妹さんは悲しそうな顔をして、「お姉ちゃんが、それで幸せなら何も言わない。でも、私なら好きな人には自分と一緒にいない時でも笑ってほしい。お姉ちゃんは彼氏といない時に笑えてる?」と尋ねてきました。

 そういえば、私は彼といない時にいつも心がザワザワしている……。そう気づいたみどりさんは自分を取り戻すためにも彼と別れなければならないと思いました。

「今思えば、彼の束縛が激しくなるにつれ、ひとりでいても誰かに監視されているように感じていました。愛されていると思っていたけれど、彼が私に向けていたものは愛じゃなくて依存や執着心だったのかもしれません」

 その後、みどりさんは妹さんに協力してもらいながら、彼との関係を断ち切ることに成功。LINEなどの繋がりも全て削除しましたが、新しい恋をすると、また相手の色に染まりすぎて自分を見失ってしまうのではないかと不安に思い、出会いの場からはまだ遠ざかっているのだとか。

 みどりさんの体験談を聞くと、「人を愛す」とはどんなことなのかと改めて考えさせられます。そばにいない時でも「あの人なら大丈夫だ」と太鼓判を押せるような恋に巡り合っていきたいものですね。

<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291