ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズ、舞台『幽☆遊☆白書』など数多くの人気作品に出演を重ね、映画・ドラマ・歌手としても活躍する崎山つばささんが、『劇場版 パティシエさんとお嬢さん』で主演を務めます。

 本作は、Twitterで話題となったラブコメ漫画のドラマ化を経た映画版で、崎山さんは恋には少し奥手な主人公の“パティシエさん”奥野丈士を甘い視線で好演しています。

 さまざまな仕事で充実した日々を送る一方、本人は「課題だらけです(笑)」と胸の内を明かします。注目が集まる若手実力派に話を聞きました。

◆複雑な男性だと思って演じた
――ファン待望の劇場版が完成しましたね。

崎山つばさ(以下、崎山):完成した映画を観たとき、僕が演じた奥野丈士の目線で観ることもできましたし、村井良大さん演じるお兄さん・帯刀 稜役の恋模様も描かれているので、いろいろな人物にフォーカスを当てて楽しめる映画だなと思いました。そのすべてがやがて丈士につながっていくので、最後はどうなるのか期待しながら観ていただけると思います。

――“パティシエさん”こと奥野丈士のキャラクターは、どのように理解しましたか?

崎山:パティシエとしてお客さんに接する時はとても紳士で頼りがいのある、男らしい人というイメージですが、いざ恋愛になると好きな人の前では子どもみたいになってしまう感じですかね。彼は子どもがそのまま大きくなってしまったみたいなところがあり、特に恋愛となると、考え方や行動もすべて子どもっぽいんですよね(笑)。

――仕事としてのプロとのギャップがありますよね。

崎山:深くは描かれていないのですが、お兄さんとは母親が違います。そういう家族模様を含めると、愛については枯渇しているのかなと思いました。原作では、そういう解釈は要らないのかも知れないけれども、僕が演じる上では、そういうことが影響しているのかなと思っていて、複雑な男性だと思って演じました。

◆小学生時代の“片思い”を思い出して役作り
――深く掘り下げているといないとでは、全然違いそうですよね。

崎山:親子関係に関するシーンはないのですが、設定としてはあるんです。なので押さえておきたかった。自分がどう理解して役柄に向き合えるか。それは自分が役柄を作っていく作業なんです。演じる上での楽しみでもありますし、やらなければいけないことでもありますね。

――なかなか気持ちを相手に言い出せない、もどかしい恋愛が見ものではありますが、どういうことに気を付けて撮影しましたか?

崎山:大人の恋愛というよりは、少女漫画のファンタジーな世界に近いと思いました。なので、等身大よりは若めの設定で、学生時代を思い出して役作りをしました。小学生の頃に好きな子がいて、なかなか告白できずに彼女への想いが自分の中でもどかしくなる気持ちがあったので、それを思い出しながら役作りをしていきました。

――仕事全般についてうかがいます。俳優業だけでなく、歌・ライブなど、充実している日々を送っていると思いますが、この充実期をどう受け止めていますか?

崎山:わがままみたいですが、自分のジャンルを映画だけ、ドラマだけ、舞台だけ、音楽だけ……と縛りたくはないんです。ライブもしたいし、声優もしたいので、いろいろなジャンルの仕事をしたいという想いがまずあります。それによって新たな発見があり、新たな出会いもある。簡単に言うと好奇心が旺盛で、いろいろなことに興味がある、という状況です。

◆“休めるときに休む精神”で自身をケア
――忙しい日々のなかでご自身のケアはどうしているのですか?

崎山:休めるときに休む精神ですかね(笑)。たとえば舞台の稽古があったとしても、ちょっと早めに終わったら趣味に時間を作ってみようとか、あるいは今日は何もしないと決めたり、オンとオフの切り替えの感覚を自分の中に持って、しっかり生きていくことを心がけています。

――最近の趣味は何ですか?

崎山:サウナです。もう、何も考えない場所(笑)。セリフを覚えるためにサウナに行ったりもするので、暑さを我慢しながらセリフを反芻することもありますけど、基本的には何も考えないですね。

――今回の作品を踏まえて、改めて俳優のお仕事の魅力について考えることはありましたか?

崎山:今回パティシエを演じてみて思ったのは、いろいろな人間になれることがとても得だなと。もちろんそれによってキツいなと思うこともあり、特にパティシエは演じていても立ち仕事で足が疲れ、細かい作業で目も疲れるのですが、それも含めて職業をまっとうできている気がするんです。いいところだけではない点が、またいいなと思うんです。

◆寺脇康文の演技に「現実を突きつけられた」
――また一方で、いくつもの仕事で充実している反面、初めて見えてきた自分の課題などはありますか?

崎山:いやもう、課題だらけです(苦笑)。先日「怖い絵」という舞台をやらせていただいたときに、還暦を迎えた寺脇康文さんが、年齢を感じさせない無尽蔵な感じと、肌のツヤと若々しさがすごかったんです。それでいて深みがあるお芝居で、本当に現実を突きつけられた感じがしました。

――現実とは、自分の現状のことですか?

崎山:そうですね。もっと頑張らないといけないなと思ったし、改めて役者としても覚悟をしないといけないなと。主演の尾上松也さんは歌舞伎の世界で長年やられている方ということもあり、言葉の使い方が卓越していました。耳に入ってきやすいんです。さすがだなと思いました。俳優としての遊び心も素晴らしいものがありましたね。

◆ひとつでもいいから、尊敬されるものを持ちたい
――この先、どういう俳優になりたいですか?

崎山:尊敬される人でありたいということは常にありますね。高みにいたいとかそういうことではなく、ひとつでもいいので何かで尊敬されるような人。僕が好きだなと思える人って尊敬できる点があり、自分にないものを持っているんです。なので、人から尊敬されるものを持っている人間になりたいなと思います。

――最後になりますが、映画を待っているファンの方へメッセージをお願いします。

崎山:パティシエさんとお嬢さんの恋模様を単純に描いているのではなく、さまざまな愛にあふれた映画になりました。家族の愛、友情の愛、兄弟の愛、そういう愛を節々で感じてもらえたらと思いますし、そこで感じたものを受けて、今度はみなさんが愛を伝えてほしいです。スイーツの愛、ケーキの愛でもいいですし、好きなものを好きと堂々と思って言ってもらえたらと思います。この映画を観て何かに愛を注いでください。

<取材・文/崎山つばさ>

【トキタタカシ】映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。