結婚適齢期と呼ばれる年齢になると、これからの生き方に頭を悩ませることも多くなります。

 清水幸恵さん(仮名・33歳)も、そのひとり。実家で暮らしていた彼女は結婚をすることで実家を出ようと考えましたが、後にその選択が間違いだったことに気づきました。

◆自立するには「結婚」しかないと思っていた
「うちには引きこもりの兄がいます。だからか、ずっと実家にいてはいけない、家を出て自立しなければ……という想いがすごく強かったんです」

 大人になっても実家で暮らし続けることに強い抵抗感を抱いていた幸恵さん。30歳を前にし、「家を出なければ」という想いがより強くなっていきました。

 しかし、介護職で薄給だったため、一人暮らしは難しいと思い、断念。他に、家を出て、自立できる方法はないだろうか……と考えたとき、頭に浮かんだのが「結婚」の2文字でした。

「友達はみんな結婚していたので、私も近い将来しなければならないという義務感も感じていました。自分の給料ではひとりで生きていくことは厳しいけれど、誰かと一緒ならできそうだし、家も出られるなと思って」

◆恋愛経験ゼロ。あらゆる手段で婚活を開始
 幸恵さんは、これまで好きな人ができたことはなく、恋愛経験もゼロ。アニメのキャラクターや舞台俳優に萌える日々に幸せを感じていました。

 けれど、そんな日常を変え、マッチングアプリを利用したり、婚活パーティーに行ったりして、積極的に婚活を始めました。

「でも、誰にもまったくときめけなくて。自分も異性慣れしていないくせに、相手の男性が女性慣れしていないと、カッコ悪いと思ってしまったり、逆に張り切られて気持ち悪いと思ってしまったりで……」

 そこで、結婚相談所に登録することを決意。恋愛感情よりも、条件重視でパートナー探しを始めました。

◆結婚相談所で婚活。いきなり指輪を渡される珍事も
 結婚相談所で幸恵さんがまずデートをしたのは、3歳年上の男性。1年ほど交際を続けましたが、相手の嫌な面ばかりが目につき、結婚に対して前向きにはなれず……。

「食べ方が汚いし、デート中も会話が弾まなかった。女性慣れしていないのか、エスコートも上手くなかったので、いつも頭の中で推しのキャラクターを思い浮かべ、あの人なら、もっとスマートにリードしてくれるだろうなって妄想していました」

 それから半年ほど経ったある日、幸恵さんはデート中に指輪を渡され、驚愕します。

「交際期間が長くなっただけで交流は深まってないのに、よく渡せたなって思いました。聞けば、結婚相談所のスタッフさんと相談して渡すことにしたみたい。なので、担当の人にこういうことはやめてくださいって言いました」

◆条件の合う年上男性と“妥協婚”を決意
 結局、その男性とは別れ、再度パートナーを探すことにした幸恵さん。その後、プロフィールを見て納得できた1歳上の男性との交際をスタートさせました。

「でも、この人もしっくりこなくて。手を繋ごうと言われると嫌だなって思ったし、デートの前はいつも、ああ、行かなきゃいけないんだ……と憂鬱な気分になりました」

 しかし、幸恵さんは彼との結婚を決意します。なぜなら、誰と付き合っても自分は恋愛感情が湧き上がってこないだろうと感じたから。

「だったら、どの人と付き合っても同じ。お互いに条件が納得できているこの人で妥協すればいいかなと。向こうだって、私で妥協しているんだろうなと思いましたしね」

 こうして、2人は結婚。幸恵さんは実家を出て、アパートで新生活をスタートさせました。

「やっと実家から出られる、よかった、ちゃんとした大人になれてるって安心しました」

◆“うちの子と話してあげて”と義親からLINEが来るように
 しかし、ホッとしたのも束の間。始まった新婚生活で、妥協婚の厳しさを痛感しました。

「夫も同じくアニメキャラが好きなオタクでしたが、好きな作品が違うので会話が続きません。交際中は食事をして2〜3時間で帰宅するので間が持ちましたが、一緒に生活するとお互いに話すことがなくて、どんどん会話がなくなっていきました」

 やがて、食事中でもテレビの音しか聞こえないほど、家の中は静かになっていきます。話せない期間が長くいなるにつれ、気まずさが増し、顔を合わせることも苦痛になっていきました。

 すると、旦那さんはその状態を両親に相談。幸恵さんは義理の両親から「うちの子と話してあげて」と日々、LINEで懇願されるようになりました。

「両親を巻き込むなんて、卑怯。LINEの通知を見るたびに、ストレスが溜まっていきました」

◆“気が休まらない”の言葉に共感し、離婚を決意
 そこで、幸恵さんは意を決して、旦那さんと話し合いをすることに。義理の両親に今の状態を伝えてほしくなかったと告げ、これからどうやって会話を増やしていこうかと相談しました。

 すると、返ってきたのは「僕たち無理だと思う。正直、一緒にいても気が休まらない。君が何を考えているのか分からない」という言葉。

 それを聞き、幸恵さんは繋ぎとめる理由がないと感じ、離婚を決意しました。

「言われてみれば、私も同じ気持ちだなと。夫婦って呼ばれることにすら違和感があって、そばにいてほしいとか話したいとかも一切思わないので、たしかに一緒にいる意味はないと思いました」

 2人が夫婦だった期間は、わずか3ヶ月。しかし、その3ヶ月で幸恵さんは多くのことを学びました。

「妥協婚って、やっぱりだめ。そして、私は誰かと一緒に暮らすことに向いていない人間。金銭的に、ひとりでは生きていけないと思ったから結婚をすることで実家を出て、自立しようと思ったけれど、その選択は間違いでした」

 現在、幸恵さんは実家に戻り、再びこれからの生き方を考えているところだといいます。自身が心から納得できる答えが見つかるといいですね。

<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291