離婚の成立に至る過程は本当に人それぞれで、一見すると簡単に叶ったように見えても実は相当に大変な思いをしていた、なんてよくあることです。

 写真はイメージです。(以下同じ) 離婚時に決定する「慰謝料」は、金銭での償いが必要なほどの苦痛があった証拠で、それを考えれば羨ましいとは本人を前にして言えないですよね。

「私がどんな思いでそのお金を手にしたか、友人がまったく気にしていないのがショックでしたね」

 そう話す竹井優さん(33歳)は、同じシングルマザーの友人の非常識さに怒りを覚えたそうです。友達の縁を切るほどのショックとは、どんなものだったのでしょうか。

夫の不倫が原因で離婚



 優さんは、三年前に夫の不倫が原因で離婚しています。不倫相手はスナックで働く女性、夫は通ううちに深い仲になったことを白状し、離婚には同意したものの優さんから慰謝料を請求されると「そんな金はない」と拒否したそうです。

夫の不倫が原因で離婚「最初は『悪かった』と謝っていたのに、慰謝料の話が出たら今度は『お前のせいで浮気したんだ』って言い出して、本当に腹が立ちました。不倫を認めた以上は、絶対に払わせてやると思いましたね」

 慰謝料なしでの離婚しか認めないと強気な夫への対応に悩んだ優さんは、友人に打ち明けます。

 友人の勧めで弁護士に相談することを決め、実際に予約を入れてから「○○日に弁護士事務所に行ってくる」と伝えると夫の態度が一変。「わかった」と慌てたように慰謝料の支払いを認めました。

慰謝料として100万円貰う



「それまでは、離婚したければ慰謝料は諦めろって偉そうな態度でしたが、弁護士が入ると自分の不倫についてあれこれ責められるし支払いからも逃げられないって気がついたのでしょうね。高い金額を吹っかけられる前に別れてしまおうと思っているのがミエミエでした」

 金額について「50万しか出せない」と夫は言い、「相場は300万よ。100万まで下げてあげるから」と優さんも譲らず、払わないのであれば弁護士を入れると今度はこちらが強気に出た優さんに負けた夫は、最終的に100万円の支払いを決めました。

「家族を裏切ってよその女とコソコソ不倫していたくせに、最後まで文句を言う元夫には本当に呆れました。だから、慰謝料が振り込まれたときは気が晴れたけど、うれしいなんてとても思えなかったですね」

同じシングルマザーの友人A



 優さんにはふたりの子どもがおり、離婚が決まったときに親権を放棄した夫は養育費を払うことも約束していました。

同じシングルマザーの友人A「それでも、相場よりずっと安い額なんですよ。これも、最初は払わないと言っていたけれど弁護士の存在を知ってから渋々決めた感じです」

 子どもたちを連れて同じ市内の実家に戻った優さんは、仕事を続けながらやっと安定した暮らしに戻ります。友人のAさんとは、同じシングルマザーとして離婚後はよく連絡を取り合い、たまに食事を楽しむようなお付き合いをしていました。

 Aさんの離婚は優さんより何年も前で理由は「性格の不一致」、「とにかく離婚したい一心で」と養育費の支払いを決めていなかったAさんの暮らしは決して楽ではないことは、普段の様子から知っていました。

 元夫が不倫していた話をすると「大変だったね」と言ってくれたAさんでしたが、「慰謝料として100万を払わせたの」と優さんが言うと態度が変わり、「いいなあお金が入って」「羨ましい」と何度も言われることが、優さんにはストレスだったそうです。

「貸せるでしょ?」



 そのAさんと友達の縁を切ったのは、その慰謝料を「貸してくれない?」と言われたから。

「貸せるでしょ?」「そのときAに言われたのは、離婚の原因は性格の不一致じゃなくて旦那さんが暴力を振るうからで、子どもを連れて逃げることで精一杯だったって事情でした。それは確かにつらいし大変だっただろうけど、不倫の慰謝料を払わせた私を『羨ましい』と何度も言われると、あのとき本当に嫌な思いをした私の気持ちなんてまったく考えてないのがわかって悲しかったです

 何も羨ましくないよ、あなたも私もがんばったじゃない、とそのたびに返していた優さんでしたが、パートのシフトが減らされて生活が苦しいことを言われ、「貸せるでしょ?」と当たり前のように口にするAさんには、大きなショックを受けたそうです

「慰謝料について『私もちゃんとすればよかった』って後悔する気持ちはわかるけど、私だって大変な思いをしてやっと払わせているわけで、楽をして手に入ったお金じゃないんですよね。Aの『貸せるでしょ?』は、まるであぶく銭なんだからこっちに渡して当然みたいな響きがあって、本当にショックでした」

 もう限界だと思った優さんは「子どもたちとの生活で使い切った」と嘘をつき、落胆するAさんの愚痴を聞く心の余裕もなくて、その日はすぐに別れたといいます。

自分と同じように人の離婚もつらいと思うこと



 その日からAさんとは連絡をやめ、今は疎遠になったと話す優さん。

「お金を貸してと言われたことより、慰謝料を羨ましいと思われることのほうがつらかったです。事情はAとは違うけれど、私だって元夫との離婚では相当に嫌な思いをしていて、そんな苦労を無視されたらやっぱり悲しいですよね……」

 自身の離婚について「後悔したくなかった」と何度も口にした優さんは、そのために努力をして結果を掴んでいます。離婚の過程は人それぞれですが、結末だけを見て羨望を向けることは、その人を深く傷つける可能性もあるのですね。

 また、それに乗って自分が得をするような提案も、失礼とは言えないでしょうか。自分と等しく、他人の離婚には相応のつらさと痛みがあることを想像できないと、親しかった友人まで失うことになります。

―私のヤバい女友達―

<文/ひろたかおり>

【ひろたかおり】
恋愛全般・不倫・モラハラ・離婚など男女のさまざまな愛の形を取材してきたライター。男性心理も得意。女性メディアにて多数のコラムを寄稿している。著書に『不倫の清算』(主婦の友社)がある。