最近は、パッと見て自分の状態を伝えることができるマークが増えています。持病がある方のヘルプマークや、妊娠中の女性がつけるマタニティマークなどが代表的ですね。

 今回は、マタニティマークをめぐって、なんとも残念なエピソードを紹介します。

妊娠4ヶ月目にマタニティマークをつけて電車に乗車

 写真はイメージです。(以下同じ) 妊娠中のつわりがひどい時期は、実はパッと見では分からない、妊娠5か月くらいまでです。

 妊婦さんのためにある「マタニティマーク」は、何かあったときのためにバッグにつけておけるように、役所や産院などで配布されています。

 竹ノ内里美さん(仮名・33歳)は、妊娠4か月くらいの頃、マタニティマークをつけて電車に乗っていました。すると前に座っていた男性がマークに気づいて席を譲ってくれました。

「マタニティマークなんか、つけて効果があるのか半信半疑でしたが、気づいて席を譲ってくれたので嬉しかったです。つわりがひどくて体調が安定せず、よく眩暈もあったので助かりました」

 そんな親切を受けて嬉しい気持ちの竹ノ内さんでしたが、その後すぐにそんな良い気分をぶち壊すことが起こりました。

全てをぶち壊す「イヤミなひとこと」

全てをぶち壊す「イヤミなひとこと」「譲ってもらった席に座ると、隣に座っているオバサンが、わたしに聞こえるような大きい声で『いいわねぇ、マークつけているだけで席に座れるなんて。わたしもつけようかしら?』と言ったんです。その隣に座る娘さんに言っていたようですが、一瞬で気分が悪くなりました」

 何も悪いことをしていないのに、出産経験もある女性に嫌味を言われて心底嫌な気分になった竹ノ内さん。ずっと隣に座っていると、だんだん罪悪感が出てきてしまい、結局そこで具合が悪くなってしまったそうです。

「おそらく、そのオバサンが出産をした時代にはマタニティマークなんてなかったでしょうし、その人はつわりなどもあまり辛くなかったのかもしれません。それでも娘さんがいるのなら、同じような体験をすることがあるかもしれないですよね…」

嫌な思いをバネに、次の行動へ

 無事出産し、子どもが大きくなった竹ノ内さんは、電車内でマタニティマークの女性を見ると、あの嫌味なオバサンのことを思い出してしまうそうです。ですがそのことを思い出すたびに、他の妊婦さんには同じ目に遭ってもらいたくないとの思いで、積極的に席を譲ってあげるよう意識しているそうです。

嫌な思いをバネに、次の行動へ「これから年をとっても、あのときに出会ったオバサンのようには絶対にならないと心に誓いました。そう思えるようになったので、いまとなってはあのオバサンに感謝です」

 本人は悪気がなくても、心ない言葉で傷ついたり、嫌な気分になる人もいます。みんながお互いに助け合う気持ちでいられたら、もっと気持ちの良い世の中になりますね。

―シリーズ「出産・子育てでの“許せない一言/行動”」―

<文/塩辛いか乃>

【塩辛いか乃】
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。note/Twitter:@yukaikayukako