6月21日、アメリカのNASCARはアラバマ州のタラデガ・スーパースピードウェイにおいて、カップシリーズ唯一のアフリカ系アメリカ人ドライバーであるババ・ウォレスの所属チームのガレージにおいて、“絞首刑用の縄”が見つかったと発表した。

 現在アメリカでは警察官によって黒人男性が殺害された事件を発端に、大規模な反差別運動が巻き起こっているが、カウンターとしてヘイトクライム(憎悪犯罪)も発生する事態となっている。

 今回発見された絞首刑用の縄だが、アメリカでの黒人差別において歴史的にも大きな意味を持つ物だ。

 かつてアメリカでは、白人が黒人を私刑によって殺害した上で、木の枝に縄で吊り下げるという陰惨な事件が多発。白人至上主義団体(KKK)も見せしめや脅迫でこの縄を使用してきた歴史がある。

 現在でもこうした絞首刑を模した縄を吊り下げるといったヘイトクライムは発生しており、ガレージで発見された縄も同様の意味を持つことが推測される。

 NASCARは声明の中でこの行為を批判。即時調査を開始し、原因を作った人物をこのスポーツから排除するとした。

「我々は怒りと憤りを感じている。この凶悪な行為に対しどれほど深刻に受け止めているかを十分に言い表す事もできないほどだ」と、NASCARは声明に記している。

「我々は直ちに調査を開始し、この行為を図った人物を特定し、このスポーツから彼らを排除するためにできることは全て行なうつもりだ」

「これまでに明確に述べてきたように、NASCARには人種差別のための場所などは存在しない。こうした行ないはスポーツを全ての人々に開かれ、そして歓迎されるものにするという決意を強固なものにするだけだ」

 なお現在は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ体制が敷かれているため、カップシリーズのガレージへとアクセスできるのは、チームメンバー、NASCARのオフィシャル、そして保安作業員のみとなっている。

 この事件に対して、ウォレスは次のようにコメントを発表。人種差別反対への運動を粘り強く続けていく必要性を痛感したと語った。

「卑劣な行動と人種差別には、信じられないほど悲しい思いをさせられる。そして僕らが社会としてどれほど遠くまで進まなければならないか、人種差別との戦いでどれほど粘り強くなければならないかということを痛感させるものだった」

 またNASCARは今月10日に、黒人差別の象徴とも受け取られている南軍旗のサーキットでの使用を禁止したが、この行為に対し反発する動きもあった。

 20日と21日、この措置に反発するグループが南軍旗を掲げてピックアップトラックとバイクでトラック外の大通りを往復する抗議行動を実施。アメリカ南部では今もこの旗を掲げていることや、NASCARは南部地域での人気が高いことから、こうした措置は反発を生むという予測もされていたが、現実のものとなった。

 ただこのグループの抗議は通常よりも遅い速度の運転で渋滞を発生させた以外は、平和的であり、衝突などは無かったと報告されている。