2020年F1世界選手権開幕戦オーストリアGPの決勝レースがレッドブルリンクで行なわれた。大波乱となったレースを制したのはバルテリ・ボッタス(メルセデス)で、レッドブル・ホンダは2台共にトラブルが発生し入賞を逃した。

 新型コロナウイルスの影響によって遅れていた2020年シーズンのF1も、ようやくオーストリアで開幕した。未だ世界で猛威を振るう新型コロナウイルスへの感染リスクを抑えるために、イベントは無観客で実施され、関係者のマスク着用やソーシャルディスタンス確保が徹底されながら、レースウィークエンドが進められていった。

 予選では、フリー走行から好調だったメルセデス勢が圧倒。ボッタスがポールポジションを獲得し、ルイス・ハミルトンが僅差の2番手につけた。しかしながらハミルトンは、Q3でベストタイムを記録した周に黄旗を無視したとして、審議が行なわれていた。一度お咎めなしとなっていたが、レッドブルからの上訴の結果、レース開始直前の14時29分(日本時間21時29分)にFIAはハミルトンに3グリッド降格ペナルティを言い渡した。これによりマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がフロントロウに並び、ハミルトンは5番グリッドとなった。

 中団勢トップのタイムを記録したランド・ノリス(マクラーレン)とアレクサンダー・アルボン(レッドブル)がグリッド2列目に並び、3列目ハミルトンの隣には、好調レーシングポイントのセルジオ・ペレスが並んだ。一方フェラーリ勢はシャルル・ルクレールが7番グリッド、セバスチャン・ベッテルがQ2落ちの11番手と低迷した。

 タイヤ選択は、上位10台の中ではフェルスタッペンがただひとりミディアムタイヤでスタート。11番手以下は全車ミディアムタイヤスタートを選択した。

 レース前には、世界中で巻き起こっている反人種差別運動への支持を示すため、ドライバーたちがグリッド前方に集まり沈黙を捧げた。F1でただひとりの黒人ドライバーであるハミルトンを含めた半数以上のドライバーが、人種差別への抗議を示す片膝をついたポーズをとった。

 気温28℃、路面温度54℃。絶好のレース日和の下、71周の決勝レースがスタートした。

 ボッタスが危なげなくトップでターン1を通過。オープニングラップでは大きな混乱はなく、トップ5はグリッド順のままで1周目を終えた。

 3周目、アルボンがノリスを交わして3番手に浮上した。ノリスは翌周にハミルトンにも交わされてしまった。ハミルトンは9周目にアルボンをオーバーテイク。3番手に浮上した。

 11周目、フェルスタッペンにトラブルが発生。ギヤが入らない様子で、スロー走行でピットに戻ったがそのままマシンを降りた。自身のオーストリア3連勝に向け、メルセデスに真っ向勝負で立ち向かっていたフェルスタッペンだったが、リタイア第1号となってしまった。

 その後18周目には、ダニエル・リカルド(ルノー)にもマシントラブルが発生しリタイア。無線でパワー不足を訴えていたランス・ストロール(レーシングポイント)もズルズルと後退し、ガレージに。序盤からトラブルが続出する波乱の展開となった。

 タイヤ交換第1号はロマン・グロージャン(ハース)だった。彼は22周目にスピンを喫した後にピットインし、ハードタイヤに交換した。

 26周目、ケビン・マグヌッセンがターン3でコースオフしストップ。これによりセーフティカー出動となった。

 ちょうど各車最初のピットインのタイミングと被っていたこともあり、グロージャンを除く全てのマシンがタイヤ交換に向かった。ワンツー体制を築いているメルセデスはここで2台を同時にピットに呼び寄せ、滞りなくタイヤ交換作業を完了した。

 これにより、コース上に残る16台中15台のマシンがハードタイヤを装着。ペレスのみミディアムタイヤに交換し、他とは戦略を分けた。

 30周目にレースは再開となった。31周目、7番手のカルロス・サインツJr.(マクラーレン)を追いかけるベッテルがターン3のブレーキングで止まり切れずスピン。大きく後退してしまった。

 レースは折り返し地点を迎え、ボッタス、ハミルトンのワンツー体制は変わらず。アルボン、ペレス、ノリスというトップ5となった。また、この波乱の展開に乗じてアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーとダニール・クビアトがそれぞれ予選順位から4ポジション上げ、8番手と9番手に浮上してきた。

 後続より1周1秒前後速いペースで他を引き離しているメルセデス勢だが、チームからボッタスとハミルトンに「ギヤボックスのセンサーに重大な問題がある。縁石を使わないでくれ」との無線が入る。これによりふたりは慎重に走らざるを得なくなった。

 50周目、グロージャン、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)に相次いでトラブルが発生。ラッセルはコース脇にマシンを止めたため、2度目のセーフティカー出動となった。

 ここで各車のタイヤ戦略が大きく分かれた。ボッタス、ハミルトン、ペレスのトップ3はステイアウトしたが、4番手以下のアルボン、ノリス、ルクレールはタイヤ交換を行なった。

 55周目にレースが再開されたが、リスタートの際にキミ・ライコネン(アルファロメオ)のタイヤが脱落。コース上にマシンを止めたため、これで再びセーフティカーが入ることとなった。アルボンはセーフティカー出動直前にペレスを交わし、3番手に上がった。

 残り11周でレースが再開した。アルボンはターン4で2番手のハミルトンに並びかけるが接触。マシンが後ろを向いてしまい、最後尾に落ちてしまった。

 これでメルセデス勢に次ぐ3番手はペレスとなったが、ファステストラップを記録してプッシュしていたルクレールが66周目にオーバーテイク。3番手に浮上した。

 そんな中、アルボンとの接触の責任を問われたハミルトンに5秒ペナルティの裁定が下った。これにより表彰台が見えていたペレスだったが、彼もピットレーンの速度違反により5秒ペナルティを課されてしまった。

 残り3周、アルボンにトラブルが発生。レッドブル・ホンダはこれで全滅となった。残り2周にはクビアトも左リヤタイヤがバーストしリタイアとなった。コースに留まっているマシンは11台。

 稀に見る大サバイバルレースとなった中、メルセデスは危なげなくワンツー体制をキープしたままチェッカーを受けた。しかしルクレールとノリスがハミルトンの5秒差以内でコントロールラインを通過したため、ハミルトンは4位に降格した。

 ボッタスは2年連続で開幕戦を制し、悲願の初タイトルに弾みをつけた。2位にはルクレール。週末を通して大苦戦していたフェラーリだったが、サバイバルを生き残り表彰台を手にした。

 そして3位にはノリス。最終ラップにファステストラップを叩き出し、わずか0.198秒差でハミルトンを上回り嬉しい初表彰台を手にした。

 4位はハミルトン、5位はサインツJr.、6位はペレス。7位のガスリーはホンダパワーユニット勢唯一の完走となった。8位エステバン・オコン(ルノー)、9位アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)、10位ベッテルまでが入賞。各チームにトラブルが続発し、チェッカーを受けたのがわずか11台という大荒れのレースとなった。

 なお、第2戦の舞台も同じくレッドブルリンク。1週間後の7月12日(日)に『シュタイアーマルクGP』として開催される。