これまで多くのF1ドライバーを輩出してきたレッドブルジュニアチーム。そこからF1へと巣立っていった最新の“卒業生”が角田裕毅だ。彼は開幕戦バーレーンGPの走りから既に注目を集めているが、少し前までは、レッドブルジュニアドライバーにおけるF1昇格候補の筆頭はユーリ・ヴィップスだったと言える。しかし、彼はコロナ禍の影響を大きく受けてしまい、そのレース計画に狂いが生じてしまった。

 ヴィップスは2019年、角田も参戦したFIA F3でランキング4位に。これはチャンピオンチームのプレマのドライバーを除けば最上位であった。2020年はTEAM MUGENからスーパーフォーミュラにフル参戦する予定となっていたヴィップスだが、コロナ禍の影響で来日することができず、フォーミュラ・リージョナル欧州選手権やFIA F2でシートを見つけ、スポット参戦をする形となった。また、この年レッドブルはヴィップスを型落ちのF1マシンで300km以上走らせ、F1出走に必要なスーパーライセンスを取得させてリザーブドライバーとしていくつかのグランプリに帯同させた。

 その間に、角田はF2で大活躍。ランキング3位で2020年シーズンを終え、2021年のアルファタウリのF1シートを手にしたのであった。

 ヴィップスは今季、ハイテックからF2にフル参戦している。彼は2020年に苦難を味わったことが精神的に自分を強くし、F1を目指すという決意をより強固なものにしたと語った。

「こういったことがあって、メンタルの面では強くなったと思っているけど、スーパーフォーミュラを走れなかったことは正直キツかった」とヴィップスは言う。

「もちろん、ユウキは昨年とても良い走りをしたので、昇格するに相応しいと思う。むしろこのことが僕をより強くした」

「僕は今年もパフォーマンスを発揮しないといけないけど、それができない理由はない。少なくとも、ペースの面では上位に食い込んでいけることが最初の週末で分かった」

「良い仕事を続けて運も味方すれば、必ず(F1昇格の)チャンスがやってくると思うよ」

 現在アルファタウリには、チームを優勝に導いた経験を持つエースのピエール・ガスリーと、既に高い評価を得ている角田が所属している。そのためヴィップスは、仮にF2で結果を残したとしても、F1昇格のチャンスを得るために1年以上待たなければいけない可能性があることも理解している。彼はこう続ける。

「その辺を予測するのは難しい」

「でも、仮に1年待つことになったとしても問題ない。例えばピエールだって、F2でチャンピオンになった後、スーパーフォーミュラを1年戦ってF1に行ったんだからね」

「来年のドライバー市場を予測するのは難しいし、その時が来るのが来年になるのかもっと先になるのかは分からないけど、できれば来年がいいね」

 ヴィップスは今季、同じフィールドで戦うレッドブルジュニアたちを打ち負かす必要があるだろう。今季のF2ではヴィップス以外にもユアン・ダルバラとリアム・ローソンというふたりのレッドブルジュニアが参戦しているが、ローソンはバーレーンで行なわれた開幕戦レース1を制して現在ランキング2番手、ダルバラも安定したパフォーマンスを見せてランキング3番手につけている。

 一方のヴィップスにとって、開幕ラウンドの3レースは不運に見舞われ散々な結果となった。車両規定違反が見つかった影響で予選は失格となり、レース1は最後尾からのスタートに。それでも10位まで追い上げてレース2のポールポジションを勝ち取った。しかし迎えたレース2はマシントラブルで後退。レース3も予選失格の影響で最後尾からの戦いを強いられ、結局バーレーンラウンドでは1ポイントも手にすることができなかった。

「レッドブルのプログラムにいようが他のプログラムにいようが、F1に行くためには結果を残さなければいけないというプレッシャーは常にある」とヴィップス。

「確かにプレッシャーはあるけど、ユアンやリアムのことはあまり考えず、自分のことに集中しようと思っている」

「自分が成長すればそれに越したことはないし、そうならないとF1にはいけない。確かに理想的なスタートではなかったけど、次のラウンドでこれ以上結果が悪くなることはないと思っているし、これ(開幕ラウンドの結果)だけで今後の展開が変わるとは思わない」

「速さは確実にあるので、今後はこのようなこと(不運)が起こらないことを願いながら、引き続き頑張っていくしかない。そうすれば最終的には上位にいて、タイトルを争えるはずだ」