先日行なわれたF1ポルトガルGP。勝利を収めたのは、メルセデスのルイス・ハミルトンだった。

 ハミルトンの勝負強さが光ったレースだったが、彼とチームメイトのマシンに取り付けられたリヤウイングは、その仕様が異なっていた。

 メルセデスは今季、レギュレーションとタイヤの変更に適応するのに苦しみ、厳しいプレシーズンテストを過ごした。ただメルセデスはそこから回復の兆しを見せ、今季ここまでの3戦で、レッドブルと非常に僅差の戦いを繰り広げている。その差は、ここ数年我々が目にしてきた中では、最も接戦になっていると言える。

 メルセデスはシーズンが始まった後も、空力パーツを中心に様々なアップデートを実施。今あるマシンとパッケージを適切にセットアップすることで、最大のパフォーマンスを発揮する術を模索してきた。

 ポルトガルGPも例外ではない。チームはグリップの低い路面でも適切にタイヤをマネジメントできるよう、ハンドリングの良いマシンを作り出すことを目指した。

 そんな中ハミルトンとボッタスは、異なる仕様のリヤウイングを使って、グランプリに挑んだ。

 メルセデスは元々、2種類のリヤウイングを用意している。そしてフリー走行で両方の仕様を試し、パフォーマンスレベルを確認するということがよくある。

 外部から見える最大の違いは、ウイングのフラップを支えるステーだ。片方は1本のステー、もう一方は2本のステー……そしてサーキットの特性に合わせ、空力面のパフォーマンスを選ぶ形になる。

 今回はボッタスが1本ステー、ハミルトンは2本ステーのリヤウイングを使った。これはチームが積極的に戦略を分けた結果なのか、それともそれぞれのドライバーが選んだモノなのかは分からない。しかしハミルトンが使った2本ステーのリヤウイングの方が、ボッタスの1本ステーのモノよりダウンフォース発生量が少なくなっている。これはコーナリングでは厳しくとも、直線スピードが伸びるということになる。

 この効果は、予選で実に正確に現れた。ハミルトンは特にアタックの後半でリヤタイヤが安定せず、逆に高い安定感を誇ったボッタスが、ポールポジションを獲得することになった。

 一方でレースでは、ハミルトンのリヤウイングの方が、直線スピードが増すためにライバルとの戦いにひと役買うだけでなく、タイヤを適切な作動温度に保つことができたようだ。

 予選ではボッタスは、このセッティングのおかげでタイヤを素早くウォームアップさせることができた。しかし予選は数周走るだけでいいが、レースではそうはいかない。

 レース中、タイヤが素早く暖まってしまうと、トレッドの基礎の部分に影響を及ぼしてしまう。その結果、タイヤのグリップが減ってスライドするようになり、その性能と寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。

 ハミルトンのマシンはダウンフォースがわずかに少ないため、異なるラインを走っていた。つまりタイヤのマネジメントの仕方も違ったはずだ。

 これはおそらく、1周目のハミルトンの加速が、ボッタスやフェルスタッペンほど良くなかったことと無関係ではないだろう。ボッタスやフェルスタッペンは、多くのダウンフォースを手にしていたため、タイヤを素早く温めることができた。しかしその結果、最初のスティントの後半でグリップの低下に苦しむことになったはずだ。

 ハミルトンはレース中、「今日は間違いなく、いつもよりタイヤが摩耗している」と語っていたが、これはライバルとは異なる反応だと言える。

 いつものように、担当レースエンジニアのピーター・ボニントンによって、ハミルトンはたしなめられた。「フロントのケーシング(の温度)が徐々に上がり始めている」と、フロントタイヤをよりマネジメントするよう求めたのである。

 またハミルトンは追いかけられる立場ではなく、前を追いかけるポジションにいたということも考慮する必要がある。つまり、レースの多くの場面でDRSを使えたのだ。

 DRSを使うとダウンフォースが減ることになり、タイヤにかかる荷重も減るということになり、ストレートでタイヤを休めることができるのだ。

 スタート直後は苦しんだかもしれないハミルトン。しかし結果的には、このリヤウイングの選択が、ハミルトンを助けることになったかもしれない。

 ハミルトンのセットアップの力量、そして勝利に向けて前進するためには辛抱強くなるという意欲……そしてチームには、ハミルトンがトップに立つために必要なツールを与えることができる能力が備わっている……それが証明されたと言えよう。