オランダはザントフールト・サーキットで行なわれた2021年F1第13戦オランダGPの決勝レースを制したのは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)だった。

 降雨により1周という異例のレースとなった前戦ベルギーGPから、舞台はフェルスタッペンの母国オランダへ。1952年に初開催とF1史でも4番目に古いサーキットではあるが、故ニキ・ラウダが制した1985年のグランプリ以来F1カレンダーから姿を消していた。

 新型コロナウイルスの感染拡大により1年ずれ込み、36年ぶりにF1開催カレンダーに帰ってきたザントフールトは、開催に合わせコースレイアウトに手が加えられた。それまでの“オールドスクール”なテイストは残しながらも、ターン3と最終コーナーにバンク角のついたコーナーが設けられた。タイヤ負荷がいつもとは異なる大きいバンクに対応すべく、ピレリから供給されるタイヤはC1〜C5の5つうち一番硬いC1〜C3が選択された。

 1周4.259kmで、ストレートは短くコース幅も狭いザントフールト。それ故にレース中のオーバーテイクは困難だとドライバーたちは口を揃え、予選セッションが重要視された。その予選で地元パワーも追い風にフェルスタッペンがポールポジションを獲得。2番手、3番手からはメルセデス勢の2台が追撃する形になった。

 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は予選Q2に進出するも、2度の赤旗提示により新品のソフトタイヤでのアタックのタイミングを逃し15番手。決勝は、予選でクラッシュしたニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がピットレーンスタートを選択したことで、角田は14番手から決勝をスタートした。また、フェルスタッペンの僚友セルジオ・ペレスもパワーユニットを交換、しかもエナジーストア(ES)がこれまでとは仕様が異なるモノだったため、ピットレーンスタートとなった。

 金曜日のフリー走行からフェルスタッペンのファン、通称“オレンジ軍団”がサーキットに大挙して押しかけた。無論決勝日もグランドスタンドをオレンジ色に染め上げ、レース前からオレンジ色の煙がコース上にかかるほどに発煙筒が炊かれた。

 72周で争われた決勝レース。抜群のスタートを決めたのはフェルスタッペン。1周目で2番手ルイス・ハミルトン(メルセデス)とは1秒以上のギャップを築き上げた。3番手にバルテリ・ボッタス(メルセデス)、フェラーリ勢の前4番手にはピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)がつけた。

 ハミルトンからはレース開始早々から、ソフトタイヤに苦労しているとチームに無線を飛ばした。1ストップ戦略を諦め、2ストップ戦略に切り替えたか、10周目からハミルトンがペースアップ。しかしトップのフェルスタッペンにもライバルの動向が伝えられ、ギャップをさらに開いていった。

 レース21周目、トップから3.7秒遅れとなったハミルトンがピットインし、ミディアムタイヤへチェンジして3番手でコースに戻った。フェルスタッペンもこれに反応し、翌周に同じミディアムタイヤに交換した。ピットタイミング後の2台の差は2秒圏内。決勝前にメルセデスは2台で戦略を分けると語っており、ボッタスはタイヤ劣化によりタイムが徐々に落ちていくものの、そのままコース上に留まった。ボッタスがフェルスタッペンを抑え、後ろから追い上げるハミルトンをサポートさせる戦略だ。

 29周目でフェルスタッペンはボッタスのDRS圏内につけると、31周目のホームストレートでオーバーテイク。このタイミングでフェルスタッペン攻略を狙っていたはずのハミルトンは、バックマーカーに阻まれ絶好のタイミングを逃した。

 役目を終えたボッタスも32周目でピットイン。その他の1ストップ戦略を採っていたドライバーもピットでタイヤを変えた。角田はソフトタイヤで33周まで引っ張りピットイン。残りをミディアムタイヤで走り切ることになった。

 首位争いで先に動いたのはハミルトン。40周目に2度目のピットインを行なうと、クルーは2.5秒でミディアムタイヤに交換し送り出した。しかし、コースに復帰したハミルトンはトラフィックに前を阻まれてしまいタイムロス。一方、全力疾走を続けるフェルスタッペンはその翌周にハードタイヤへスイッチし、ハミルトンの3秒前でコースへ復帰した。

 50周目あたりからハミルトンがファステストを叩き出しながら猛追を開始。トップのフェルスタッペンにタイヤを使わせる作戦に出たようだ。周回遅れの影響もあったが、56周目の時点でその差は1.8秒まで縮まった。

 しかし、ハミルトンの追撃もここまで。61周目に入ると、ミディアムタイヤを履き攻めの走りを続けたハミルトンのタイムが急激に落ち始めた。

 ハミルトンにフリーストップの機会を与えるべく、チームは68周目にボッタスをピットへ呼び込んだ。ハミルトンにファステストラップを記録させてボーナスポイント1を獲得させるべく、チームはボッタスに攻めないよう無線を飛ばしたが、ボッタスは指示に従わずファステストラップを更新。ただし、71周目にハミルトンもピットへ入り、最終周でファステストラップを”奪い返し”た。

 トップチェッカーは母国のフェルスタッペン。会場に詰めかけたオレンジ軍団からは大きな歓声が響いた。これで今季7勝目となり、ドライバーズランキングでも3ポイント差で首位に返り咲いた。

 2位にはハミルトン、3位にボッタスがつけた。メルセデス勢はピット戦略で対抗するも、フェルスタッペンとレッドブル陣営に真っ向勝負で負けたことになる。ハミルトンはレース後に次戦イタリアGPでの挽回を誓った。

 その後ろ“ベスト・オブ・ザ・レスト”の4位にはガスリー。好調そのままに、昨年勝利を上げたイタリアGPへ向かう。5位にルクレール、フェラーリ勢の間に割って入ったのはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)で、レース最終周にカルロス・サインツJr.を抜いてみせた。

 ピットスタートのペレスは怒涛の追い上げを見せ、その後ろ8位まで順位を回復。チームタイトルとしても重要なポイントを持ち帰った。また、ペレスはドライバー・オブ・ザ・デイを記録した。

 角田は14番手走行中の48周目にパワーユニットのトラブルが発生。残念ながらリタイヤとなった。

 今回のオランダGPでは、タイトル争いを繰り広げるフェルスタッペンとハミルトン、そして彼らを支えるチーム間の激しくもフェアな頭脳戦そして総力戦が展開され、見応えのある戦いとなったと言えよう。