昨年の最終戦アブダビGPでは、決勝レース終盤のセーフティカー解除時の手順について、今も論争が続いている。これを受けてマクラーレン・レーシングのCEOであるザク・ブラウンは、F1チームの首脳陣が、FIAのレース運営に大きな影響を及ぼすような状況は変更するべきだと語った。

 F1アブダビGPのレース終盤にセーフティカーが出動した際、当初レースディレクターのマイケル・マシは、周回遅れのマシンをリードラップに戻すことなくレースをリスタートすると指示を出した。しかしその後、最終ラップの1周前になって、首位を行くルイス・ハミルトン(メルセデス)と2番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の間にいる周回遅れのみをリードラップに戻すと指示を変更。古いタイヤを履いていたハミルトンには、新しいタイヤに履き替えたフェルスタッペンを抑える術はなく、結局フェルスタッペンがオーバーテイクを決めてトップチェッカー。同年のワールドチャンピオンに輝いた。

 この手順に対してはメルセデスが猛抗議。最終的には控訴を取り下げたものの、FIAはこの件に対して調査を行ない、新たな運営構造を組織することを検討している。

 なおこのセーフティカーが解除される前後のタイミングで、メルセデスとレッドブル双方のチーム代表や首脳陣は、マシに対して無線で様々な要求、そして意見を述べた。見方によってはこの訴えによって、マシのセーフティカー解除に関する判断が揺らいだようにも見える。

 マクラーレンのブラウンCEOは、こうした状況は好ましくないとして、マクラーレンのウェブサイトで次のようにコメントを発表した。

「一部のルールとそのガバナンスは、現状では受け入れ難いことは明らかだ」

 そうブラウンは語る。

「レギュレーションの取り締まりが一致していないことについて、満足している人は誰もいない。しかしこれは、レースでの優位性を見出すために、各チームによって”活用”されてきた」

「今はチームの力が強すぎる。私は以前、その強さを減らす必要があると言った。我々チームは、F1のレギュレーションと統治機構を作り上げる上で、重要な役割を果たしている。しかしその影響力は、必ずしもこのスポーツ全体を考えた時に最適なモノは何かということによって動かされているわけではない」

「特にこのスポーツの長期的な戦略については、チームと相談し、それぞれの情報に基づいた視点で検討する必要がある。しかしこのスポーツは、ある特定のチームによって統治されているように見えることもあるんだ」

「忘れてはいけないが、我々、チームは、誰よりもレギュレーションの取り締まりに関する不一致に貢献してきたのだ。セーフティカー先導のままレースを終わらせることは絶対に避けようというプレッシャーをかけたのもチームだ」

「様々なチームが不満を述べている数多くのレギュレーションに賛同したのは、不満を訴えているチームだ。レースディレクターへの無線メッセージが放送されるのを利用して、ペナルティやレース結果に影響を与えようとしているのもチームだ。そして興奮しすぎたチーム代表が、ギャラリーに向けてアピールし、レース関係者にプレッシャーをかけるということまである」

「これはF1を道徳的に素晴らしいモノにはしていない。世界のモータースポーツの頂点というより、パントマイムのオーディションのように感じられることもある」

 FIAの前会長であるジャン・トッドは、チームの同意を基にF1を統治したいという意向を示していた。このことは、レギュレーションを決定するにあたって、チームの影響力が大きくなるということを意味していた。

 新会長になったモハメド・ベン・スレイエムは、これまでとは違う形で様々な問題に対処したいと明らかにしており、ブラウンCEOもその意向を歓迎。リバティ・メディアがF1の所有権を持ち、その方向性が変わった今こそ、そうするのに最適な時期であると考えているようだ。

「昨年12月に、モハメド・ベン・スレイエム氏がFIAの新会長に選出されたことで、F1の運営方法を全面的に変えるチャンスが得られたと思う」

 そうブラウンCEOは語った。

「昨シーズンの最終戦アブダビGPにFIAの調査の焦点が当てられるのは明らかだ。しかし私の見解では、これは原因ではなく”兆候”だったと思う。誰がルールを作り上げるのか……しかも整合性と明確性には問題があり、過去2年の間には、時には注目を集めることも多々あった」

「組織的な難しさの兆候は、2020年のオーストラリアGP(新型コロナウイルスの感染者が見つかったことで、走行開始直前に開催中止が決定)と昨年のベルギーGP(悪天候によりセーフティカー先導での走行のみで終了)でも見られた。どちらも、イベントへの準備が不足しているように見えた」

「FIAとF1の役割をより明確にして、このスポーツのリーダーシップを高める必要性は、モハメド・ベン・スレイエムFIA会長、(F1の)ステファノ・ドメニカリCEO、そしてそれぞれのチームにおける議題となるだろう」

「かつての経営陣は、独裁的なスタイルでF1を運営してきた。だからこのスポーツを正しい方向に向けるためには、チームや利害関係者とより多く協議するというアプローチを取る必要があった。しかし今では、F1は良い形でリセットされたため、さらに前に進んでいくためには、より強力でスポーツ全体を率いていくようなリーダーシップと統治体制に戻る必要がある」

「FIAとF1のリーダーシップが高まると、私は確信している。そしてこのスポーツを集中的に管理していくこととなるだろう。そして我々は、このスポーツが進化していくことに注力する。しかしながら難しい意思決定に関しては、責任を逃れるようなことはしない」