予想外のF1復帰によりF1キャリアの“第2スティント”に入ったハースのケビン・マグヌッセン。今では「世界チャンピオンを目指さなければ」という大きなプレッシャーからは解放されたという。

 マグヌッセンは2020年シーズン末に、経済的な問題でロマン・グロージャンと共にハースから放出された。ハースのシートには、ルーキーのミック・シューマッハーとニキータ・マゼピンのふたりが収まることとなった。

 2022年もハースはこのラインナップを維持する予定だったものの、ロシアのウクライナ侵攻を受けてEUの制裁対象者となったマゼピンとの契約を解除。新シーズンに向け、チームをよく知るマグヌッセンを呼び戻した。

 マグヌッセンとしては再び世界チャンピオンの夢を追いかけることができるようになった。しかし、その夢を追わなければというプレッシャーはもはや感じていないという。

「違うと思う。僕はその章を閉じて、それが実現しないと受け入れることができたからね」

 そうマグヌッセンは言う。

「今は(F1に)戻ってきたけど、僕は1日1日を大切に過ごしている。仕事に集中して、トライしつつ楽しんで、できる限りプッシュしようとしている」

「期待という大きな重りが肩にのしかかっているようには感じないね。F1のチャンピオンになれたら素晴らしいと思う。夢であることに代わりはないけど、(復帰前と)同じような期待を抱いている訳ではない。もしそうなったら、とても嬉しいだろうけどね」

「僕は今F1にいて、シートがある。つまり、可能性は無限大……肩の荷が下りたという感じはしない」

 2020年末に一度F1キャリアに幕を下ろしたマグヌッセン。2021年はチップ・ガナッシDPiからIMSAに参戦し、父ヤン・マグヌッセンとル・マン24時間にLMP2で参戦。WEC(世界耐久選手権)のハイパーカークラス参戦を目指すプジョーの『9X8』プログラムにもドライバーとして参加が決まっていた。

 加えて、アロー・マクラーレンSPからインディカーにスポット参戦を果たすなど、活躍の場を広げていたマグヌッセンだったが、F1から離れていたことでF1の愛を再確認したという。

「誰にでもあることだよ……どんなことでもね。何かを失った時、自分が持っていたモノに気づくこともある」と彼は振り返る。

「確かに、(F1を)離れた時に自分のキャリアを振り返って、突然それがとてもありがたく感じた」

「それまでも感謝はしていたけど、同じような感じではないんだ。僕は色んなことにイライラしていたし、F1にいられる喜びではなく、僕が勝てていない事実だけを見ていた」

「僕は本当の意味で感謝できていなかったから、少し変わったんだ」

 そう語るマグヌッセンは、復帰戦となった開幕戦バーレーンGPから八面六臂の大活躍を見せている。バーレーンで5位に入り、エミリア・ロマーニャGPでは予選4番手を獲得。ここまで入賞を重ねドライバーズランキングでも10番手につけている。