マクラーレン、”素直な”新F1レースディレクターを高評価。アクセサリー規制については「他なら議論にもならない」
チャンピオンシップ決定戦となった2021年の最終戦アブダビGP。当時レースディレクターを務めていたマイケル・マシが採ったセーフティカー解除手順が、タイトル争いに大きな影響を与えたとして物議を醸した。
これによりマシは事実上の更迭。今季からはレースディレクターは2名交代体制となり、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)でレースディレクターを務めたニールス・ウィティヒと世界耐久選手権(WEC)でレースディレクターを務めるエドゥアルド・フレイタスが抜擢された。
昨年まではレースディレクターひとりに対する重圧が大きすぎたとして、新任のふたりを支えるシステムも大きく変更。故チャーリー・ホワイティングがレースディレクターを務めた時代の副官ハービー・ブラッシュがシニア・アドバイザー、コリン・ヘイウッドがリザーブとして復帰した。
チームが直接的にレースコントロールとやり取りを交わすことは禁じられ、遠隔で裁定判断などを支援する”バーチャル・レースコントロールシステム”も導入された。
フレイタスはWECでのレースディレクションとの掛け持ちということもあり、開幕から5戦は全てウィティヒがレースディレクターを務めてきたが、次戦スペインGPではフレイタスがF1レースディレクター”デビュー”を果たす。
ウィティヒのアプローチはマシとは大きく異なり、レギュレーションに順当。トラックリミットやコース外でアドバンテージを得た際の対応などを厳しく取り締まっている。
マクラーレンのザイドル代表は、今季はこれまでFIA側とは「透明かつ建設的な」対話が行なわれていると考え、昨年のレースコントロールとの直接比較は避けたものの、ウィティヒらの働きは称賛に値すると語っている。
「過去と比較したくはない。我々の立場からすると、FIAの従来の体制との交流ないし協力関係にはとても満足していたからだ」とザイドルは言う。
「しかし私としては、ニールスとエドゥアルドの新体制は、F1新時代に向けて非常に良いスタートを切ることができたと考えている」
「ニールスは、ルールの徹底という点ではとても率直だ。そして彼が期待していることを伝えるという点でもとても素直で、そこが個人的に気に入っている」
「同時に、考え直すべきことがあれば常に話し合いを設けてくれるし、建設的な意見も聞かせてくれる」
「こうした観点から、この開幕数戦がどうだったかを見てみると、我々は良い環境にあると思う」
またウィティヒは、事実上形骸化していたアクセサリー類のマシン乗車中の脱着義務や、耐火アンダーウェアを含む正しい装備着用など、レギュレーションの厳格化を推し進めている。
アクセサリー類の脱着は、2005年に初めて「レースやラリー競技者によるアクセサリー類(ピアスや大きなネックレス)の着用を直ちに禁止する」とFIAが表明して以降、国際モータースポーツ競技規則にも記載されていることだ。
FIAとしては、2020年バーレーンGPのロマン・グロージャンに続く大炎上クラッシュの発生に備えてリスクを可能な限り排除したいと考えての取り締まり強化ではあるが、一部F1ドライバーから反発を受けている。
FIAは罰金やチャンピオンシップポイントの剥奪など罰則追加も検討する一方で、ルイス・ハミルトン(メルセデス)には簡単に取り外すことのできないアクセサリーについて一定の免除期間を設けている。
ザイドルはこの問題はドライバーとメディアの双方がパドック内で”少し過剰に”反応していると考えており、FIAの柔軟な対応を高く評価している。
「結局の所、これは何年も前からあるルールなのだ」とザイドルは続ける。
「他のカテゴリーで働いた経験があれば、議論にすらならないことだ。アクセサリーを外すのが嫌だとか、耐火性のアンダーウェアを履くのが嫌だとか言うのなら、ドライブしなければいいのだ。明解かつ簡単なことだ」
「FIA側は、ジュエリーを外すのが少し難しい状況にも対応できるような話し合いの場を設けてくれた。これこそ、我々が求めているモノであり、解決に向けてオープンな話し合いが可能だということを示している」