MotoGP第9戦カタルニアGPは、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア)の周回数勘違いによるポジションダウンという波乱の展開でレースが終了したが、もうひとつ大きな話題となっているモノがある。それは1周目に発生したマルチクラッシュだ。

 レース1周目のターン1ではフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ)、アレックス・リンス(スズキ)、中上貴晶(LCRホンダ)の3人が転倒。これはターン1に向けてのブレーキングでインに入り込んでいた中上がタイヤをロックさせて転倒、彼のすぐ前を走っていたバニャイヤと、アウト側を走っていたリンスが巻き込まれる形でクラッシュしてしまったのだ。

 リンスはこのクラッシュで、結果的に左手首を骨折する怪我を負ってしまった。中上とリンスは前戦イタリアGPでも接触と転倒を巡って火花を散らしていたが、今回のクラッシュでリンスはさらにヒートアップしている。

 彼は中上のライディングだけではなく、一連の事態についてレーシングインシデントと判断、“お咎めなし”としたレースディレクションにも憤慨しており、痛烈に批判した。

「ああ、まず第一に、病院に向かったタカが無事なのを願っている」と、リタイア後にリンスは語った。

「でも彼はこんな風に走ってはならないよ。ライバルを傷つけたいとは決して望んでいないとは思うけど、彼のあの行動は限界を越えていた」

「それがひとつ目に言いたいことだ。そして2つ目は、これが受け入れられないということだ」

「つまり、僕らはこのままじゃいけないんだ。レースディレクション、スチュワードたちは(当該の事故に対して)”これ以上の動きはなし”と言っているけど、支離滅裂だ」

「(スチュワードパネルの)フレディ・スペンサーには、前戦ムジェロの時点で、昨年オンジュ(デニス・オンジュ/Moto3)が受けたのと同じペナルティを科すことが必要だと話していた」

「でも本当に酷い話だけど、今日彼らは国際放送で、スチュワードがMotoGPのレベルに無いことを示してしまった」

「結局、彼のバイクが僕にあたって、僕は宙を飛んだ。左手は骨折していると思う」

「これから検査で病院へ行くけど、ちょっとしか動かせないから、悪いだろうね」

「だから彼らの下した決定がすごく悲しい。今日の僕らは素晴らしいペースがあったんだ……」

 そうリンスは転倒で終わったレースを悔やんだ。そして改めて、中上の走りとスチュワードの決定を批判した。

「今、僕は確実に怪我をしている。僕らは時速350kmでレースをしていて、これはゲームじゃないんだ」

「さっき言ったように、彼らはそのレベルに達していない。それが僕の言える全てだし、彼らは今日それを露呈した」

「これ以上のアクションは無いとされたけど、タカはまずコースを少しアグレッシブに横切っていた。そこでライダーが彼に近づいていたら、間違いなく彼は接触していた。2つ目に彼はブレーキングを遅らせていて、フロントを失った。これは明らかだ」

「セーフティコミッションで、僕は他のライダー全員とレースディレクターのマイク・ウェッブに、ムジェロでの出来事を示したんだ」

「何人かのライダーは『タカのミスだな』と言っていたけど、『これはリンスの失敗だ』と言う人達もいた」

「でもその後は、みんながスチュワードの事について話し始めていた。彼らがその仕事を上手くやっていないのは明らかだよ」

 リンスは、スチュワードパネルの人員交代のプレッシャーをかけていくつもりだという。特に、500cc王者で現在スチュワードパネルの議長を務めているスペンサーに対してはこの仕事には”年を取りすぎている”と語った。なおスペンサーは現在60歳と、日本企業なら定年の近づいている年齢だ。



「プレッシャーをかけていくつもりだ」と、リンスは言う。

「ムジェロでのインシデントは忘れても、今日僕は怪我をしてしまった。あるライダーが、僕とペッコ(バニャイヤ)のチャンピオンシップを戦うチャンスを奪ってしまったんだ」

「ペッコはチャンピオンシップを争っていたけど、今年はもうないかもしれないと思う」

「スチュワードパネルの御三方は、その仕事を上手くできていない。それは明らかだ」

「彼(スペンサー)はそこでやっていくには年を取りすぎていることが示された。若い人が(スチュワードパネルの役割を)すべきだ。新時代に競っていた人なのか、既にリタイアした人なのかは分からないけどね」

 またスズキのチームマネージャーであるリヴィオ・スッポも、リンスの考えに同意。今回のクラッシュを“レーシングインシデント”とすることは受け入れられない決定だと主張した。

「スチュワードに対しては抗議した」と、スッポは明かした。

「彼らはあのインシデントをチェックしたが、レーシングインシデントだと判断した。私としては、こうしたものをレース中の事故とするのは受け入れられないものだ」

「アレックスとペッコは共に、彼(中上)の犯したミスがどれ程大きなものだったかを知る権利があると思う」

「ライダーのポジションのデータや、普段のブレーキングポイントからどれくらい離れていたかは簡単にチェックできる」

「それに加えて、彼は完全に左から右へと横切っていた。ポル(エスパルガロ/レプソル・ホンダ)とも非常に接近しているように見えた」

「仮にレースディレクションが、今回のような事を、通常のアクシデントだと考えているならば、我々も考える必要があると思う。我々にとって、これは受け入れられないモノなんだ。ミスは起こりうるが、今回の件は非常に大きなものだった」