F1では、ドライバーらの給与に一定の上限額を設定するレギュレーションの導入が検討されているものの、フェラーリでチーム代表を務めるマッティア・ビノットは「一筋縄にはいかない」として導入に向けた課題を指摘した。

 すでにF1では、チーム財政の格差によるパフォーマンスへの影響を是正するために、2021年からチームが1シーズンに使えるお金の上限を決める予算制限レギュレーションを導入している。

 導入初年度は1億4500万ドル(2022年6月7日のレートで約192億円)。シーズンごとに500万ドル(約6億6000万円)ずつ上限は引き下げられる。インフレや現在の世界情勢からその上限緩和も議論されているが、2022年シーズンは年間1億4000万ドル(約185億円)となっている。

 この予算制限レギュレーションでは、F1ドライバーやチーム上級職数名の給与などは適用外となっている。しかし以前からこの点については議論が続いており、ドライバーや上級職の給与額に別の上限を設けることが検討されているのだ。

 フェラーリのビノット代表は、最近もチーム間で議題に挙がったモノだとしながらも、「ことドライバーの給与制限に関しては一筋縄ではいかない」と語っている。

「我々はそれについて議論していて、何が解決策になり得るか把握しようとしている」とビノットは言う。

「短期的には無理なことだ。というのも我々はすでに契約を結んでいて、それを簡単に破る訳にはいかないからだ。法的な要素が絡んでくるから、どうするかを理解するべく議論を行なう」

「これは重要なことで、我々も理解しているし、時間がかかることも認識している。しかし確実に、我々はそのプロセスを進めていくつもりだ」

 給与制限レギュレーションは2023年からの導入が想定されていたものの、多くのドライバーは2023年よりも先の契約を結んでいる。

 フェラーリのシャルル・ルクレールは2024年末まで、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは2028年末までの長期契約を結んでおり、その年俸は最大で5000万ユーロ(約70億円)に上ると言われている。

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も給与制限レギュレーション導入は「十分にメリットがある」としながらも、ビノット同様に「適用が難しい」と考え、F1が”会計世界選手権”にならないようにと警鐘を鳴らしている。

「既存の予算制限に加えられていくべきモノはとても多く、パワーユニットにも制限が展開されていくだろう」とホーナーは言う。

「企業ごとの申告構造など、複雑な問題で溢れている。とても多くの複雑さがあるが、我々はそれを乗り越えていく必要がある」

 以前給与制限レギュレーションの導入が議論された際には、チームのふたりのドライバーに適応する分として年間3000万ドル(約40億円)を用意し、その額を越えた際はチーム予算上限内から捻出するという案が挙がった。この計画案にはアルファロメオやアルピーヌを含め多くのチームが賛成している。

「予算(上限)とバランスを取りながら、許容範囲を設けるというのは正しいアプローチだと思う」とアルファロメオのフレデリック・バスール代表は語る。

「制限をオーバーする可能性もあるし、予算制限内の一部を使う必要が出てくるかもしれない。どうなるかは分からないけどね。でもスポーツにとっては重要なことだから、こういう策を見つける必要があるのだ」

 アルピーヌのオットマー・サフナウアー代表もこの計画案に賛成し、次のように語っている。

「チームがドライバーの技量とアップデートでトレードオフできるよう、予算制限全体の下にそれ(給与制限)を追加することに賛成だ。結局のところ、両方ともコース上でのパフォーマンスに寄与するモノだからね」

「そしてそのトレードオフを可能にする許容範囲を設けることは、おそらく正しいことだと思う」

 給与制限レギュレーションは、すでにラグビーやアメリカンフットボールなど他のプロスポーツでの採用例が存在する。マクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表は、そうした前例がF1でも「機能するメカニズム」はあることを示していると感じているという。

そして「同時に、今は閉ざされた環境で話し合いを続けることが重要だと思う」と続けた。

「今、公の場でどうすれば上手くいくかを議論する意味はない。だから乞うご期待だ」