2022年から大きく技術規則が変更されたF1。その中で大きな問題となっているのが、フロア下のダウンフォース量の増減によってマシンが上下に高速で揺さぶられる「ポーパシング」だ。

 F1第8戦アゼルバイジャンGPの金曜日に行なわれた定例のドライバーブリーフィングで、この問題が首や背中の痛みにつながっていると複数名のドライバーが声を上げたことで、FIAが対策へ乗り出した。

 カナダGPに向けて、対策の”一歩目”となる新たな技術指令が全F1チームに向けて発表されている。

 ポーパシングは開幕前のプレシーズンテストでは、多かれ少なかれ全てのチームのマシンに発生していた。しかしシーズンが進むにつれて多くのチームが解消、もしくはパフォーマンスとポーパシングの妥協点を見つけた。

 そのため、この問題に苦しむマシンも限定的なものとなっているが、ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンのメルセデスのふたりは、依然として苦しめられている。

 メルセデスには”空力由来の”ポーパシング以外にも、路面の凸凹によってフロアが路面に当たることでマシンが跳ねる「バウンシング」という問題も抱えている

 市街地サーキットが故にバンピーな路面コンディションで行なわれた第7戦モナコGPやアゼルバイジャンGPでは、その後者がメルセデスのふたりを苦しめた。特にハミルトンはレース中背中の痛みを訴え、マシンを降りた後も腰に手を当てる仕草も見受けられた。

 FIAはこうした問題に対して、短期的・長期的な対策に関する技術指令をチームに向けて公開している。

 しかし、カナダGPはFIAの観察やデータ収集に重きを置いていることから、ドライバーの走行自体はこれまでと変わりはない。

 FIAの声明には次のように記載されている。

「新世代のF1マシンの空力振動(ポーパシング)現象と、レース中およびレース後のドライバーの身体への影響が再び目に見えるようになった今年のFIA F1世界選手権第8戦を受けて、FIAはスポーツの統括団体として、安全面からこの現象を軽減または撲滅すべく、チーム側に調整を要求するために介入する必要があると判断した」

 FIAは、主にポーパシングやバウンシングによる諸問題がドライバーが運転中に集中力を欠く可能性があるという観点から、安全上の危険があるとして介入を決定した。安全上の理由ということであれば、いかなる変更もチームの全会一致の支持を必要としない。

 FIAはこう記している。

「ドライバーの安全のために、医師との協議の結果、介入することを決定した」

「300km/hを超えるスピードで走行するこのスポーツでは、ドライバーの集中力が必要とされる。過度の疲労や痛みによって集中力が欠けるとなれば、重大な結果を招く可能性もあると判断された」

「加えて、FIAはドライバーの健康への直接的な影響を懸念している。最近のイベントで、多くのドライバーが背中の痛みを訴えている」

 またFIAは、カナダGPに向けて発表された技術指令は「FIAがこの問題に取り組むために講じる措置に関して、チーム側にガイドラインを示す」ために出されたモノだという。

 今回発表された技術指令のひとつ目は「プランクとスキッドブロックに関して、その設計と観察された摩耗の双方から、より綿密に精査を行なう」というモノ。ふたつ目は「車両の垂直加速度に基づき、垂直振動の許容レベルを量的に示す指標を定義すること」とされている。

 FIAはさらにこう付け加えている。

「この指標の正確な数式は、依然FIAが分析を進めているところだ。F1チームにはこのプロセスに貢献するよう求めている」

「これらの短期的な対策に加え、FIAはチームと技術会議を開き、中期的にこの現象を引き起こすマシンの傾向を抑えるための対策を確立する予定だ」

 メルセデス以外の、ポーパシングやバウンシングに悩まされていないF1チームの多くはドライバーへの懸念を認める一方で、対策のためのレギュレーション変更には否定的だった。

 しかし許容レベルを設定することとなれば、過度に激しいポーパシングやバウンシングが発生するチームは、パフォーマンスを犠牲にしてでも車高を上げざるを得ないということになるだろう。つまり場合によっては、メルセデスだけがパフォーマンスを落とすということになる可能性もある。