スポーツランドSUGOで行なわれたスーパーフォーミュラ第5戦では、予選後に松下信治(B-Max Racing Team)に2グリッド降格ペナルティが科された。この件に関しては、予選直後にペナルティ裁定が下されたものの、それが一転して「審議中」と訂正された結果、決勝日の朝にようやく裁定が確定するという、イレギュラーな流れとなった。

 この時、当事者間で何が起こっていたのか? motorsport.comに入ってきた情報を整理する。

 まず、ペナルティ対象となる事象が起きたのは予選Q1のグループA。松下はアタックに向けてウォームアップ走行をしていたところ、後ろからアタック中の平川亮(carenex TEAM IMPUL)が迫ってきた。松下は最終的にハイポイントコーナーの立ち上がりで平川に道を譲ったものの、松下は国際モータースポーツ競技規則 付則L項4.2.eに抵触したとして、予選後の15時25分付で2グリッド降格ペナルティの裁定が下されたことが、予選暫定結果表にて通知された。

 国際モータースポーツ競技規則の当該箇所にはこう記されている。

「いかなるときも、車両を不必要に低速で運転したり、不規則に走らせたり、 あるいは他のドライバーにとって潜在的に危険と見なされるような運転をすることは許されない」

 この条文にある「不規則で危険な運転」とみなされていたのは、ハイポイントコーナー手前での動き。松下はそこで一旦レコードラインを外れてイン側にマシンを振ったものの、その後またレーシングラインに戻ってハイポイントコーナーをターンイン。そしてまたイン側に避けてそこで平川に道を譲ったのだ。

 競技団はこの動きが「平川のアタックに何らかの影響を与えたのではないか」として検証と聞き取りを開始。聞き取りを受けた平川も「影響を受けた」と認めたため、レースディレクターから審査委員会へこの件が報告された。

 平川は予選後、この動きについてmotorsport.comに対してこう語っていた。

「1回譲ってくれたかなと思いましたが、また戻ってきました。それで僕はダウンフォースが抜けてしまいました」

 ただ、松下としてもこの動きには意味があった。松下は決勝後に当時の状況をこう振り返っている。

「あの時は平川選手と僕のシークエンス(アタックまでの流れ)が違いました。彼は1周早くプッシュをしていて、僕がそれに気付いたのはシケイン(S字コーナー)を立ち上がってからです」

「僕は後方を確認するために左右に振ってみました。距離を測るため、というのもそうですし、一直線だと(アタック中であることを知らせる)ランプが付いているかどうかも見えづらいので。そして僕の判断ではまだ距離があると思い、次のコーナーに行って避けてあげた方がいいかなと判断しました」

 審査委員会は監視カメラの映像を基に判断をした結果、2グリッド降格という裁定を下した。ただ、当時は松下もこれには納得しておらず、議論は平行線に。非常に判定が微妙で難しい案件だということは双方理解していたため、それならばと、松下、平川、そして審査委員会が顔を突き合わせて話し合う場が設けられた。これがペナルティ裁定から一転して「審議中」に訂正されるという異例な事態の経緯だ。

 夜遅くまで行なわれた話し合いの中では、松下の動きは上記の条文にあるような「危険な運転」ではなかったという結論となった。ただし、譲るタイミングが遅れたことで平川のアタックに影響を与えてしまったという判定は覆ることがなく、結果的に明朝に正式なペナルティが確定した。

 このようにアタックを妨害したか否かというケースは具体的なデータや数値を使うことが難しいため、今回の一件も競技団にとっては悩ましいケースだったようだ。だからこそ、松下の主張を一方的に突っぱねることなく、丁寧に議論をしていき、今後このようなケースをなくしていきたい……それが今回、裁定が確定するのに時間がかかった理由のようだ。

 松下も、今回は微妙なケースだったとしつつも、丁寧な説明を受けたことには満足しているようで、次のように話していた。

「すごく微妙ですよね。だからこそ、『ここはどういう感じなんですか』という話をしながら、どこがどうペナルティなのかというところを丁寧に説明してもらいました。その中で最終的に妨害されたという判断をされてしまったので、それはしょうがないです」