2022年のF1マシンは、グラウンドエフェクト・カーとなったが、走行中に車高が激しく変化する現象が発生。特にアゼルバイジャンGPでは、複数チームのドライバーが健康への懸念を示し、FIAに対策を求めた。

 FIAはカナダGPを前に、新たな技術指令を出して、この問題に介入する姿勢を見せた。マシンにかかる垂直方向の加速度などのデータを測定し、一定の指標を策定。これらの基準を超えて激しく振動しているマシンに対して、振動の抑制を強いる予定であることを各チームに通知した。

 さらに、FIAのシングルシーター技術責任者であるニコラス・トンバジスは、フロアの剛性を強化するためにステーを追加するという選択肢をチームに提示した。

 しかし、実際にステーを追加したのはメルセデスのみ。トンバジスの技術指令は、ステーは1本までと規定するテクニカルレギュレーションと矛盾しており、ライバルチームから抗議を受ける可能性があることから、メルセデスは土曜日以降2本目のステーを取り外した。



 最適な妥協点を探るべく今週さらなる会議が行なわれる予定だが、フェラーリのマッティア・ビノット代表は、FIAの手続きは正しくなかったと主張した。

「我々としては、技術指令は適切ではないということだ」

 そうビノットは、カナダGP決勝後に話した。

「FIAにも言ったことだが、その理由は、技術指令はレギュレーションを明確にしたり、何らかの形で取り締まりに対応するために存在するが、レギュレーションを変更するために存在するのではない、ということだ」

「技術指令を通じてレギュレーションを変更することはできないんだ。それがガバナンスだ」

 FIAは安全上の理由であれば、チームの承認なしにレギュレーションを変更することができる。だがその場合、世界モータースポーツ評議会の承認を得なければならない。評議会の次回の会合はイギリスGPを控えた今月末に行なわれるため、理論上は次のレースまでにルールの微調整が行なわれる可能性がある。

「安全上の理由だとしても、FIAに何ができるのか?」

「TAC(技術諮問委員会)と協議してレギュレーションを変更し、世界評議会に諮って、変更を正式に承認してもらう必要がある」

「技術指令ではレギュレーションを変更することはできないから、我々にとってそれらの技術指令は適用できないモノだった」

「実のところ、間違って発行されたのだと思う。追加の(ステー)ブラケットは、どのマシンにも装着されていない。だから無駄なノイズだったんだ」

 ビノットは、ドライバーの長期的な健康状態に対する懸念を和らげるために、ポーパシング改善に取り組む価値があることを認めたが、各チームがまだ比較的新しい2022年型マシンの開発を続けていけば、FIAの介入なしに問題が軽減されるかもしれないと考えているようだ。

 メルセデスを含む一部のチームはすでに、マシンの車高を高くしながらも同時にパフォーマンスを追求していた。

「ポーパシングは今後取り組み、抑制していくべきものであり、おそらく技術的な変化が必要だ」と、ビノットは付け加えた。

「とはいえ、これまではそれほど問題にはなっていなかった」

「コース次第のところもあるんだ。クルマの開発は進んでいるし、その開発も進んでいくだろう」

「議論する必要がある技術的な問題であり、どのようにしてそれを行なうのか、答えが見つかっていない問題なんだ」