ポルシェは、スパ・フランコルシャンで行なわれているGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのスパ24時間耐久レースに先立ち、ドライバビリティに重点を置いた新型GT3マシン『911 GT3-R』を発表した。

 ポルシェの現行『911』である992型をベースにした新型GT3の設計・開発における目標は、「より長い距離を速く走ること」だったと911 GT3-Rのプロジェクトマネージャーを務めたセバスチャン・ゴルツは語る。

「我々の仕事は、新しい911 GT3-Rをさらに速くすることではない。バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)によって設定された性能ウインドウの中で、ここでの利点はすぐに消えてしまうからね」

「我々としては、顧客がレーシングカーでより長い距離を速く走ることが可能なようにすることが、主な焦点だった」

「そのためには耐久性が必要になる。だからこそ、ドライバビリティの向上を優先的に重視したのだ」

 このマシンの”心臓”に搭載されているのは、ポルシェの水平対向水冷6気筒エンジン。991.2型をベースにした従来のGT3マシンの4リッターから、4.2リッターへと排気量が上げられた。大排気量化により、新型911 GT3-Rでは低回転域で9%、高回転域で4〜5%のトルク向上に成功した。

 またエンジンを前方に5.5度傾けることでマシンの重量配分を改善した上、大型ディフューザーを搭載するスペースを確保した。

 フロントのトランク構造を切り取ることで、ノーズ下のステップがより顕著に。フロントエンドの空力性能を改善することで、マシン下面前方からリヤディフューザーへと抜ける空気の流れを改善した。

 そしてホイールベースを2459mmから2507mmへと延長することで、「より安定した一定の空力効果と、リヤタイヤへの攻撃性低減」を実現したとゴルツは説明している。

 なお、新型911 GT3-Rでは従来型よりもランニングコストを10%下げることも目標に掲げられている。

 新型は、2021年7月にポルシェのヴァイザッハテストコースで初走行。これまでに計112時間の走行テストを行なっており、カタルニア・サーキットでの30時間の走行テストではノートラブルだった。

 新型911 GT3-Rのホモロゲーションカーとしてのレースデビューは、2023年1月に開催予定のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦デイトナ24時間レースとなる。

 ただポルシェ・モータースポーツは、2022年中にテストレースを実施することを否定してはおらず、おそらくニュルブルクリンク耐久シリーズ(旧VLN)のシリーズ後半のいずれかになると思われている。

 また、世界耐久選手権(WEC)とその姉妹シリーズであるヨーロピアン・ル・マン・シリーズでは、GTEに代わるGT3カテゴリー(仮称:LMGT)を導入する2024年からこの911 GT3-Rを走らせることができるようになる。

 スパ24時間レースのパドックに展示されているこの新型マシンの価格は、51万1000ユーロ(約6960万円)。現行マシンが45万9000ユーロ(約6250万円)ということを考えると、その差は歴然だ。

 ただ新型では、タイヤ空気圧モニタリングシステムなどの先代では”オマケ”だったモノが標準装備されている。