混乱に始まり混乱に終わったF1の2021年シーズン。同年の世界タイトルの決定に大きく関与したとして非難の的となった当時レースディレクターを務めたマイケル・マシが、その後の日々について語った。

 シーズンを通してレッドブルのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトンが激しいタイトル争いを繰り広げた末、同点で迎えた2021年シーズン最終戦アブダビGP。レースではハミルトンが終始リードしていたものの、最終盤のセーフティカー出動の際にタイヤ交換を行なったフェルスタッペンがハミルトンを交わし、初の世界タイトル獲得を果たした。

 ただ、マシが下したそのセーフティカーの解除手順を巡っては、大きな論争が巻き起こった。メルセデスが抗議を取り下げ、FIAが調査を行なったことで決着がついたものの、この論争はチーム間、ファンの間でくすぶり続けた。

 マシは、スポーティングレギュレーションの少なくともふたつの条項を正しく履行しなかったとして、レースディレクターから事実上更迭されることとなった。

 FIAは調査の結果、マシは”誠実に”職務へ当たっていたとした上で、履行は”ヒューマンエラー”の結果であるとしている。そしてこの調査結果を踏まえ、現在は2名交代制+遠隔バックアップによるレースディレクションへと体制強化が図られた。

 マシは7月初めに、オーストラリアへの移住に伴いFIAを退職。そして今回News Corp.のインタビューに応じ、誹謗中傷と殺害予告に晒されたアブダビ事件後の「暗い日々」について明かした。

「私は世界で最も嫌われている男だと感じた」とマシは言う。

「殺害予告を受け、私と私の家族のところに行くぞと言われた。ショッキングだったよ。人種差別、誹謗中傷、侮辱……この世のあらゆる名前で呼ばれた」

「そして(メッセージは)続いた。Facebookだけでなく、ビジネス用のソーシャルメディアであるはずのLinkedinでも同じような誹謗中傷が飛び交っていた。同じような罵詈雑言がね」

 マシはインタビューの中で、アブダビ事件後に向けられた非難が大きな影響を及ぼしたという。「より精神的な面で」苦しみ、家族や友人とも話をする気にも”全くならない”ほどだったとメンタルヘルスへの影響を語った。

 一連の騒動から、マシは「より強い人間になれた」とも前向きに語る一方で、「私はただひとりになりたかった」と暗い心境を明かしている。

 2022年シーズンは、新たにレースディレクターに就任したニールス・ウィティヒやエドゥアルド・フレイタスがより厳格なレギュレーション履行を実施している。

 ただドライバーからは、アクセサリー着用やトラックリミット違反、裁定の一貫性などを巡って不満の声が上がり続けている。これから先も、レースコントロールが下す決定に対して、多かれ少なかれ反発が生まれるのは止むを終えないことなのだろう。