セバスチャン・ベッテルの引退発表をきっかけに、F1のドライバー市場は大きく動いている。その中で、混乱しつつあるのがアルピーヌのラインアップだ。

 ベッテルの後任として、フェルナンド・アロンソがアルピーヌからアストンマーチンに移籍すると電撃発表をした翌日の8月2日、アルピーヌは昨年のF2王者であるオスカー・ピアストリをリザーブから昇格させ、2023年のドライバーとして契約すると発表した。

 アルピーヌは当初アロンソの残留を考えていたため、期待の若手であるピアストリは2023年のF1デビューを求めて、別のシートを探すことを余儀なくされそうになっていた。

 ウイリアムズにレンタルされる可能性も指摘されていたが、ピアストリと彼のマネージャーであるマーク・ウェーバーは、ダニエル・リカルドの後任としてマクラーレンとの契約を確保しようとしていたことが分かっている。

 しかしアロンソの電撃移籍で、状況が変わった。アルピーヌがピアストリをF1レースシートに座らせる契約を結ぶと発表したのだ。アロンソの移籍は、アルピーヌにとって青天の霹靂だったのだろう。アルピーヌのチーム代表であるオットマー・サフナウアーは2日、motorsport.com含む一部メディアに、アストンマーチンのプレスリリースによって初めて、アロンソの決断を知ったと語っている。

 ドミノ式にピアストリのF1昇格が決まった形だが、サフナウアーは2023年にピアストリとオコンのコンビが実現すれば、グリッド上位に返り咲くという長期的目標への正しい道筋になるとコメントした。

「オスカーは聡明で稀有な才能の持ち主だ」

「我々は、ジュニアフォーミュラの困難な道のりを通して彼を育て、サポートしてきたことを誇りに思っている。この4年間の協力関係を通じて、彼がF1へのステップアップを果たすのに十分な能力を持つドライバーに成長するのを、我々は目の当たりにしてきた」

「リザーブドライバーとして、彼はサーキット、ファクトリー、テストなどでチームに触れ、成熟度、将来性、スピードを示し、エステバンとともにセカンドシートへの昇格を確実なものにした」

「この2人が一緒に組めば、優勝とチャンピオンシップへの挑戦という長期的な目標を達成するために必要な継続性を与えてくれると信じている」

 ところが、ピアストリの昇格を発表したチームのリリースには、ピアストリのコメントが含まれていなかった。サフナウアーは、事態が完全に収束したわけではないために、ピアストリとは実際にまだ契約をしたわけではないと認めている。

「オスカーと彼の陣営は、それがどんな意味であれ、自分たちの選択肢を考えているところだ」

 一方で、チームとピアストリとの契約上の取り決めから、ピアストリの移籍はそう簡単ではないことを示唆した。

「私が知っているのは、彼が我々との契約上の義務を負っているということだ」と彼は付け加えた。

「そして、我々も彼に対してそうしている。そして、我々はその義務をこの1年ずっと守ってきた。そして、その義務は23年まで続くし、いくつかのオプションが行使されれば24年も続くかもしれない」

「そして今年の義務は、リザーブドライバーとして、昨年のマシンにかなりの時間乗せることだった。来年のレースに向けて、昨年のマシンで5000kmというプログラムの半分以上を走行しているんだ」

「また、FP1やシミュレーション作業もあり、我々双方がそれらの義務を果たしているんだ。したがって、我々は彼と23年に関して法的に有効な契約を結んでいるのだ。そして、もしオプションが付けば、24年分もだ。彼がマクラーレンで何をしたかは知らない」

 アルピーヌのリリースには、すでに契約を結んだとも読める文言が含まれているが、これはチームがピアストリに対して2023年に向けて契約上の決断を行なったことを公表しようとしたものと見ることができる。これは、彼と契約を結ぼうとしている他のチームに対して手を引けという警告であり、もしその他のチームが彼を求め続けるなら、法的な争いに発展する可能性があるということであろう。

 だが、ピアストリ本人の心はアルピーヌにはないようだ。彼はアルピーヌの声明が、本人の同意なしに出されたものだとする声明をTwitterに掲載。来季アルピーヌからF1に参戦することを否定している。

「僕の同意なしに、アルピーヌF1が今日の午後遅く、僕が来年彼らのためにドライブするというプレスリリースを出したと理解している」

「これは間違っているし、僕はアルピーヌと2023年の契約を結んでいない。僕が来年、アルピーヌのドライバーになることはない」

 なお、この件に関して、マクラーレンはまだコメントを出していない。彼らはインディカーでもアレックス・パロウの移籍絡みで揉めている真っ最中だ。

 約1ヵ月のF1サマーブレイクの間もF1ドライバー市場は目まぐるしく動いていきそうだが、アルピーヌにとって思惑通りの夏休みになっていないことは確かだろう。