フェルナンド・アロンソは、アルピーヌ残留の可能性が高いと見られていた中でアストンマーチンへの電撃移籍を決断した。アストンマーチンが彼に複数年契約を提示したことが、その大きな要因だと考えられている。

 アロンソはハンガリーGPで、「僕の希望はアルピーヌに留まること」であり、その交渉は「10分もあれば終わる」と語っていた。しかし結局、より長期的な契約(オプションを含めれば3年とも言われる)を提示したアストンマーチンに移籍を決めた。

 一方のアルピーヌは、7月29日に41歳となったアロンソのスピードが衰えた場合に備えて柔軟性を持たせるため、1年プラス1年オプションの”1+1契約”しか結ぶ用意がなかったという。

 アロンソ本人は「僕はまだ100%だ」と主張しているが、アルピーヌは「いつか転機が訪れる」と考えていたのだ。

 アルピーヌのオットマー・サフナウアー代表は、アロンソに提示した契約について、彼の年齢を否定することはできないと語った。

「未来を予測するのは難しいんだ」とサフナウアーは説明する。

「いつも言っているように、もし未来を予測できるなら、私はここにいない。ラスベガスに行っているはずだ」

「我々は1+1契約を提示した。 フェルナンドとは『もし来年の今頃、君が同じレベルのパフォーマンスをしていれば、もちろん君を獲得(オプションを行使)する』と話し合った」

「でも、彼はパフォーマンスとは関係なく、もっと確実なものを求めていたと思う。もっと長く(F1に)いたいんだ。それが2+1年や3+1年、3年契約ではなく、1+1年契約の急所だったのだろう」

 サフナウアーは、ミハエル・シューマッハーのような偉大なドライバーでさえ、キャリアの晩年は、キャリア初期ほどには良くなかったと言う。

「ドライバーには生理的な何かが起こり、若いころのような能力が発揮できなくなる時期があるんだ。ミハエルにも同じことが起こったと思う」

「42歳のミハエル・シューマッハーは、32歳や35歳のときと同じドライバーではなかったと言うのが正しいと思う。他のスポーツマンにも同じことが起こる」

 30代前半のシューマッハーは、まさにフェラーリ黄金時代の真っ只中。一方、一度引退した後、メルセデスからF1に復帰して2年目がサフナウアーの言う42歳にあたる。チームの戦力差やブランクなども加味する必要があるとはいえ、年齢の影響は否定できない。

「例えばクリケットの場合、それほど肉体的に激しいスポーツではない。だが目と手を協調させ、ミリ単位で正しい位置にバットを動かす必要がある」とサフナウアーは付け加えた。

「でも32〜34歳を過ぎると、世界最高のバットマンでもそれができなくなる。それは彼らに何かが起こるからであり、レーシングカードライバーにも同じことが起こるんだ」

「もし高いレベルで活躍しているのなら、もちろん引き留める。だが1年ずつそれをやりたい。彼はもっと長期の契約を望んでいたと思う」

 アルピーヌのCEOであるローラン・ロッシは、アロンソのF1引退後のプランとしてアルピーヌのLMDhプログラムに加えることを示唆していた。

 アロンソはトヨタのWECドライバーとして、ル・マン24時間レースで2勝、WECシーズンチャンピオンにも輝いており、2024年からLMDh車両での参戦を開始するアルピーヌにとっては有力なドライバー候補だった。

 サフナウアーは、アロンソがこの提案を快く思っていなかったという指摘を否定し、次のように語った。

「フェルナンドとも話したし、ローランとも話した。我々は彼がF1を終えても、ファミリーに残り、他のレースを戦ってくれることを望むとね。だからフェルナンドにとってはサプライズでもなんでもなかった」

「彼はそのことに同意し、良いアイデアだと思っていたからだ」

「問題は、それがいつになるのか、ということだった。仮にそれが実現していたら、彼は絶対に喜んでル・マンに行き、その道を歩み続けていたと思うよ」