3年ぶりに開催されたWEC世界耐久選手権第5戦富士6時間レースのために来日した、ル・マン24時間レースの主催者ACO(フランス西部自動車クラブ)会長のピエール・フィヨンとWECを運営するLMEMのフレデリック・ルキアンCEO。彼らは9月10日土曜日に富士スピードウエイで会見を開き、記者の質問に答えた。

 WECも他のモータースポーツ同様に変革の時期。SDGs、カーボンフリーといった社会環境の変化に無関心ではいられない。かといってレース本来の勝ち負けを無視するわけにもいかない。その両立を叶えるべく、WECとACOは知恵を絞っている。

 WECの魅力は、最新技術搭載のレースカーによる高速の長時間バトル。中でも技術の粋を集めたハイパーカークラスの戦いは、関係者も観客も手に汗を握る。このクラスは速くなりすぎたLMP1マシンの性能を下げて、参加台数を増やす目的で今年から創設された。開発に高度技術と多大な開発費がかかるハイブリッド・システムの搭載は義務づけられておらず、多くの自動車メーカーの参加を容易にした。

 今年はトヨタとプジョーの参加を見るが、来年にはポルシェ、フェラーリ、キャデラックが参戦を予定し、2024年からはBMW、ランボルギーニ、アルピーヌの参戦も予定されている。アメリカのIMSAウエザーテックシリーズのGTPクラスに参加するLMDh車両の参加も可能で、ポルシェなどはその先兵だ。

「WECの将来は明るいと思う。多くの参加者が期待できるルール作りをした。このカテゴリーはLMHとLMDhの両クラスが参加できるが、LMHだLMDhだと言った分かりにくい呼び名はやめてハイパーカーと呼ぶことにする」と、ルキアンCEOは語る。

 WECの中心的レースであるル・マン24時間は2023年、100周年を迎える。ACOは記念大会とすべく、数々のイベントを開催する準備中だ。ル・マンの100周年優勝トロフィーが製作され、優勝チームに与えられる。また、過去の優勝車を80台集めて展示を行なう。

 ル・マンの100周年には及ばないが、新生WECも誕生10年を数える。燃料電池を使用したレースカーの参戦も、WECは進めている。H24というクルマでル・マンカップに参戦中だ。ゆくゆくはゼロエミッションのレースを目指しての試みだ。ル・マン参戦実現は2025年、あるいは26年になるという予想だが、開発には時間がかかる。水素と並行してトタルエナジー社と炭素排気量が70%削減できる100%再生燃料の開発も行なっており、こちらも期待は大きい。

 WECとIMSAは大筋で共同作戦をとりながら、独自の路線を歩む部分もある。スポーティング・レギュレーションの設定だ。テクニカル・レギュレーションは両者でうまく収束できた感があるが、スポーティング・レギュレーションに関してはそれぞれのシリーズの独立性を尊重して、独自なものを採用するという。

 最後に2023年のカレンダーについて。すでに暫定カレンダーは決まっているが、FIAの承認はこれからだという。ヨーロッパのレースが今年より1戦増えることになりそうだ。WECは参戦台数を36台程度と見込んでいる。

 以上がACOのフィヨン会長、LMEMのルキアンCEOの会見で得られた情報だ。今季は終盤になってプジョーが参戦し、盛り上がりが見えてきたWEC。参戦メーカーが増える2023年以降のさらなる盛り上がりに期待しよう。