2022年のスーパーGTは、最終戦もてぎで2位に入った12号車カルソニック IMPUL Zの平峰一貴、ベルトラン・バゲット組がGT500チャンピオンに。最終戦での自力タイトルの可能性を残していた塚越広大、松下信治組(17号車Astemo NSX-GT)は5位フィニッシュとなり、ランキング4位でシーズンを終えた。

 ここ数年、最終戦までタイトルの権利を残しながらも、あと一歩のところで王座には届いていなかった17号車。今季最終戦の舞台はホンダが得意とするもてぎ、しかも17号車はホンダのブリヂストンユーザーの代表としてもてぎで事前テストも行なっていただけに優位かと思われたが、公式練習では11番手、予選では10番手と苦しんだ。

「走り始めて、なぜか今回はテストの時よりグリップが薄いという話になりました。今回は(セットアップで)大きな事柄をいくつか試す予定でしたが……『なんでそうなるの?』と。この間(のテスト)とクルマも同じで気象条件もほぼ同じはずなのに……」

 そう語るのは、17号車を担当する田坂泰啓エンジニア。事前テストと同じセットアップでマシンを持ち込み、そのパフォーマンスを確認した上で新たなセットアップを試そうとしていたようだが、予想外のグリップ不足にチームも慌てたようだ。

 テストよりも若干低温なコンディションだったことから、ドライバーの松下も田坂エンジニアもウォームアップが不十分ではなかった可能性を指摘しているが、「難しいですね……レーシングカーは生ものですから」と田坂エンジニアは言う。

 迎えた決勝レースでは、序盤に上位陣の接触などが相次いだこともあり、10周目にフルコースイエロー(のちにセーフティカーに)が出された時に17号車は4番手までジャンプアップしていた。リスタート直後の21周目に松下は、ヘアピンで12号車のバゲットをオーバーテイクしたが、バックストレートから90度コーナーへの飛び込みで抜き返されてしまった。田坂エンジニアは「やっぱりZはまっすぐが速いなと思いました」と振り返る。

 その後松下は塚越に交代するも、上位陣についていくほどのペースはなく、17号車は結果的にトップから16秒遅れの5位でフィニッシュした。

 田坂エンジニアは、もてぎのようなサーキットにおけるセットアップのベースを持ち合わせていないことが自身の課題だと語る。

 彼は「うりゃーと(本人談)」踏ん張るコーナーがあるようなサーキット……例えばS字のある鈴鹿や、SPコーナーや大回りの最終コーナーを持つSUGO、さらにはオートポリスといったサーキットではセットアップの確たるイメージを持っている。実際今季は鈴鹿での2戦で共に2位、SUGOでは決勝で雨に翻弄されるも予選5番手、そしてオートポリスでは優勝を飾っている。一方でもてぎや岡山といったコースでは迷いが生じることもあるという。

「低速サーキットへのコンセプトも持っていないといけません。それを持てなかったのが敗因です」

「そこをちゃんとしないとチャンピオンを獲れないと痛感したので、来年に向けては気合いを入れて、低速サーキット用(のベース)を探します」

「先ほども言ったようにレーシングカーって生ものですが、ベースさえ持っていれば対応できると思います。そこを持っていないのが僕個人のダメなところだと思っています。中高速サーキットはイメージが沸きますし、外したとしてもリカバリーする自信がありますが、ここでは『どうすればいいんだ』と悩みながらレースウィークを過ごしました。空力では補えないメカニカルな部分で解決策を考える必要があると思います」

 30年以上の経験のあるトラックエンジニアでも、未だ“答え”を探し続けているというのがモータースポーツの世界。「ない答えを探し続けるような仕事なので、疲れました(笑)」と笑う田坂エンジニア。シーズンが終わりほっと一息ついたのも束の間、王座獲得に向けて頭を悩ませる日々がまた始まっていく。